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 ラーメン大盛り

※スパルタ式訓練の続き


「いただきます」

先日のテストのお礼だと荒北くんがお昼を奢ってくれるというので、私はよろこんで食堂についてきた。
荒北くんと一緒に食券の自販機を眺めて、ラーメンに。荒北くんには女子がラーメンかヨ。と言われたけど食堂なんだからいいじゃない。

「朱堂ラーメン食べてんの?」
「んー」
「荒北と一緒とは珍しいな」
「んふふはふんはへ」
「食べてから喋ろヨ…」
「っん、荒北くんの奢りで」

へー。と私の隣に新開くん、荒北くんの隣に福富くんが座る。東堂くんは?と聞くと後でくるよ。と新開くんが箸を持ちながら教えてくれた。

「何か勝負して負けたのか靖友」
「いや、朱堂ちゃんに勉強教えてもらった礼だよ」
「そういえば朱堂は入学式新入生代表で壇上に上がっていたな」
「え、そうなの福ちゃん…」

そんな私の入学式の様子を語り始める福富くんと新開くん。意外と覚えているものなのかな…と思いながら私はラーメンをすする。
入学式か…懐かしい。友達が一人もいなくて心細かったんだよね。今は友達もできてそんなことはないけど。

「朱堂ちゃんだから頭良いのかよ…」
「そう?」
「で、靖友はどの位成績上がったんだ?」
「ここで言えってか?ふざけんな」
「荒北くん、お肉食べる?」
「食う」
「朱堂、オレにくれよ…」
「え、だって荒北くんに奢ってもらったから…ご、ごめんね?」

私は別に悪くない。新開くんとそんな話をしていると荒北くんの箸が伸びて私のどんぶりから肉が荒北くんの口に運ばれた。それを見ていた新開くんの口が荒北くんの口と同じ動きをてはいるが、目は実に怨めしそうにしている。

「そういえば朱堂はどこの中学出身なんだ」
「いってもわからないよ、多分」
「自宅から通ってんならここらじゃねぇの?」
「県外だよ。中学は県外で、お父さんの仕事の関係でここに来た」
「…そう、だったのか」

なんだか福富くんが意外そうな顔をしている。そういえばこんな話をしたの初めてだった。今はそれよりもラーメンで、早く食べてしまわないと。お肉がなくなったおかげでちょっと楽になったどんぶりに私はまた勝負を仕掛ける。
なんで荒北くんは大盛りのボタンを押したんだ…!

「麺が減らない…」
「安心して残して良いぞ」
「食べ残しだよ…そこまで餓えてるの…?」
「つかオレの奢りだヨ朱堂チャアン」
「だって荒北くんが大盛りにするんだもん…」
「大盛りは普通だろう」
「普通だな」
「だよな」
「男子ならね。私女子だよ女子」

なぜ黙る。私がそんなに大食いだと思われているのだろうか。いや、たぶんそれはない。ご飯を一緒に食べることは少ないし、教室でお菓子を食べることもない。
一緒に食べるのは合宿とか、大会関係の時くらいだし。むしろ私のお弁当のおかずを寄越せと言うくらいだ、どのくらい食べるかを知っているはず…たぶん。

「女子って…食べないの?」
「男子に比べたら食べないと思うよ」
「オレ、女子に結構食べ物もらってる…」
「それは、あげるためにもってきてるんだよ」
「んで、朱堂ちゃん全部食べんの、それ」
「やってみせる、私は強い」

福富くんの真似ね。といってまた残っているラーメンに立ち向かう。真似された福富くんはなんだかばつの悪そうな顔をしているが、それよりもラーメンだ。麺が伸びてしまうと美味しくない。

「お、なんだ朱堂も一緒か」
「げ、東堂きやがった…」
「むさくるしい中の花だ、喜べ」
「花ならこの場合朱堂だろ。東堂、お前は男だ」
「福、オレは美形だ。性別など関係ない」
「早く座れよ尽八」
「私の隣はやめてね」
「開口一番それか」

オレが隣に座という誉れ高いことを拒むか!と怒りながら福富くんの隣に座る東堂くん。別に東堂くんが嫌いとか、そういうことではなく、女子のファンが面倒なのだ。あからさまに嫌がらせを受けた事はないけど、ファンクラブの子に聞かれたことがある。「朱堂さんて、東堂くんの事どう思ってる?」もうこの一言で全部悟りましたよ、ええ。「同じ部活なだけだよ」と一言返すと、その子も悟ってくれたらしく「わかった」と頷いてくれた。それからその子とは私が無害である証明とともにアドレス交換をして、合宿の時に東堂くんの写真を送ってりして仲良くやっている。もちろん当の東堂くんにもそれを話してあるから快く写真を撮られてくれている。

「…っ、ごちそう様!でした」
「ああ…全部食べちまった…」
「あー…苦しい…食べすぎた…」
「なんだもう食べ終わったのか」
「東堂くんが来るの遅いんだよ…あー…苦しい…」
「だからオレが食べるって…靖友はそんなことで怒らない…たぶん」
「オレは新開に奢る義理はねえよ」

おなか一杯…空腹で餓死ならわかるけど、満腹で苦しい…。午後からの授業に体育がなくてよかった。あったこれ絶対苦しい。あ、でも世界史は眠くなっちゃいそうだな、なんて苦しいおなかを抱えてぼんやりと考える。

「そういえば荒北、お前図書館で朱堂と逢瀬を重ねていたそうではないか」
「あ?」
「あーそれ、私が荒北くんに勉強教えてたんだよ。よく知ってるね東堂くん」
「ファンクラブの子が言っていた。荒北と朱堂は付き合っているのかと聞かれたんだが」
「うるせっつとけ」
「そのようだな。して、成績はどうだったのだ」
「おめぇに言う義理はねえよ」
「荒北くんは元々頭悪くないから大丈夫だよー。私の自信作です」

あーおなか苦しい。



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