弱虫 | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

 後輩の先輩

翌日になると奏は教室で授業を普通に受けていた。本人曰くせっかく学校に来ているのなら勉強する、駄目なら保健室戻る。らしい。本人の意思と言う事で尊重してもらい、奏は緊張しながらも授業を受けている。
先生に指名されても普通に答え、後で聞けば教科書とノートを見て勉強したというではないか。詳しく聞いてみると、公式も何もかも見覚えがあるから大丈夫だったらしい。元から奏の成績は優秀だったし、ただ人間関係がリセットされたような状態なのかもと本人は言う。同じクラスの女子、特に仲の良かった者達とは少しだけまだ遠慮が見えるが、比較的良好に見える。

「奏、今日部活来てみる?」
「部活…あの、でも、迷惑じゃ…」
「迷惑じゃないよ、なあ寿一」
「ああ、顔を見せるで、そのまま帰ってもいい」
「……じゃあ、はい」

部活の時間になると、新開は奏に声をかけて部室に案内する。一昨日東堂に連れられてきた以来の事で、奏にしてみるとほぼ初めてに近い。
恐る恐る部室に入ると男子特有の低い声で挨拶されて驚いている。

「あ、朱堂さんもう大丈夫なんですか?」
「こ、こんにちは…」
「泉田だ、朱堂。泉田、朱堂まだちょっとアレだから」
「ああ、そうなんですか…」
「あ、あの…朱堂奏です」
「泉田塔一郎です」
「あ、そうか。朱堂みんなの名前わからいんだった」

3年はだいたいもうわかってるからと泉田に奏を頼む。奏も奏で新開に言われるままに泉田に「よろしくお願いします」と頭を下げる。いつもと違う奏に対して戸惑った様子だったが、それでも奏は奏に変わりないと泉田も了承して今いる部員を紹介する。部員のほとんどは奏に対して友好的なので困ったことはないが、奏にとっては初対面なので驚きの連続らしい。

「あ、あの…」
「どうかしましたか?」
「女子は、いないんですか?」
「女子は朱堂さんだけですよ、他全員男子部員です」
「え…そ、そう、なんですか?」
「朱堂さんだけがマネージャー業を専門にしてますよ」

すごいですね。とまるで他人事のように奏は驚いて見せる。それは何に対しての驚きかは泉田にはわからない。人数に対して自分ひとりなのか、女子が居ない中での活動なのか。

「あれ、朱堂さん。もう具合いいんですか?」
「黒田雪成、僕と同じ2年のクライマーです」
「朱堂奏です、よろしくお願いします」
「……ど、どうも」

目で泉田と黒田は会話をする。

朱堂さんまだ駄目なの?
まだ調子悪いみたい。今日は部活に見ていくだけみたい。
そっか…調子悪いんじゃ仕方ないよな…

と奏が知らないところでやり取りをしている。それを奏はなんとなく感じ取り、そしてそれが自分に関することなのだろうと思う。

「あの…私、迷惑なら…」
「迷惑じゃないです!」
「そうですよ、朱堂さんは尊敬する先輩です」
「でも、…私、何もできないですし…」
「とういうか、どうして敬語なんですか?」
「え…」
「先輩なんですから、普通にしてください」
「えっと…でも、あの…だって、私……」
「あー!朱堂さんだー!」

大きな声に驚いてそっち方をみると、身長の高い葦木場がキラキラとした顔でいる。
奏はただでさえまだビクビクしているところに、誰よりも背の高い、しかも2m超えの葦木場を見て、声もなく驚いていた。



prevnext