弱虫 | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

 どうも2度目まして

不幸中の幸いか、脳に異常はなく一時的なものでしょうという結果が出たらしい。
学校に登校するが、教室に来るのではなくしばらくは保健室登校という形になると担任が奏のクラスで話す。保護者から隠してくれというよりも、周りの理解が欲しいのでそのままの状態を話してくれた。

「と言う事なので、朱堂さんはしばらく保健室登校となります。環境に慣れるまではあまり騒がないように」

それは自転車競技部員にも連絡はいき、休憩時間になると次々と同じクラスであり主将の福富のもとに現れては「朱堂さんが保健室って本当ですか?」や「朱堂さんに会っても大丈夫でしょうか」という心配の声だ。誰に対しても福富は一律に「落ち着くまではわからない。でも普通に接するくらいならいいと思う」と言うだけだった。
奏と仲の良い女子が休憩時間に奏に会いに行き、その様子を聞く分には緊張気味だけど元気そうとか、保健の先生と話していたという。

「なあ寿一、オレ達も会いに行ってみないか?」
「………恐がらないか?」
「笑顔で行けば大丈夫だろ」
「福ちゃーん」
「靖友も朱堂のところに行かないか?」
「朱堂ちゃんのとこ?オレらが行ったらビビんじゃねえの」
「笑顔で行けば大丈夫だって。寿一も靖友も笑顔笑顔」
「お前に言われてもな…」

三人で言っていると、そこに東堂も加わり、結果として行くことになった。時間は昼休みだ。今日は食堂ではなく、購買で買って保健室に向かう。
保健室のドアをノックすると、奏の声が聞こえる。

「朱堂、昨日ぶりだな。気分はどうだ」
「こ、こんにちは…えっと、とうどうさん」
「オレ、新開隼人」
「しんかい、さん?」
「いつもみたいに『隼人』でいいんだぞ」

スパンと新開の頭を荒北が叩く。何も知らなない、というよりわかっていない人間相手に何を言っていると、福富も目で訴える。それに東堂でさえ「隼人、それはどうかと思うぞオレも…」と責める。

「オレ、荒北靖友。よろしくネ、朱堂ちゃん」
「あらきた、さん…」
「福富寿一だ。同じクラスで同じ部活だ」
「ふくとみ、さん」
「朱堂は昼食べた?」
「まだです…」
「じゃあ一緒に食べようよ、オレ達ここで食べてもいい?」
「はい、多分…」

奏を真ん中に座らせて、それからサイドを固める。オドオドしながらも奏は持って来ていた弁当を食べ、聞かれたことを答える。まだ自分から話しかける勇気はないものの、会話は聞いているという状態だ。

「朱堂、部活はどうする予定だ?見ていく?」
「部活、ですか?えっと…」
「無理しなくていいよ、朱堂ちゃん。昨日の今日だし、部員事情知ってるし」
「しかし備品管理は朱堂がすべてまかなっていたから…それをどうするかだ」
「ノートか何かに記録しておくとか?葦木場だったか朱堂の手伝いよくしてたろ」
「でもアイツ、ボーっとしてるかんなぁ…まだ黒田がいいんじゃねえ?」

奏を置いて話をしている。今の奏にはそれがよくわからないが、とりあえず自分がしていた仕事をどうするかという話をしているのだろうという見当はついた。それにどうしてほしいという意見が出るはずもなく、奏はただ黙ってその話に耳を傾ける。
恐いと思っていた人たちが意外と自分のために色々と考えてくれているのだと奏は少しだけ思った。

「………」
「どうした寿一、朱堂の弁当見つめて」
「……リンゴ」
「ああ、福ちゃん好きだもんねリンゴ」
「いつもなら朱堂が言わずともくれていたからな。しかしフク、それを今してはならんぞ」
「あ、あの…食べ、ますか?」
「!…いいのか?」
「はい…どうぞ」

朱堂ちゃん福ちゃんに甘いよ。と荒北が笑って言えば、奏は頭を傾げて「ふくちゃんさん…?」と呟いて、福富と奏以外が笑った。



prevnext