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「#エロ」のBL小説を読む
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 ○○を待つ

「荒北くん、どうしたの?その頭」
「え?」
「仮装の続きか?」

福ちゃんと朱堂ちゃんがオレを見て困ったように笑う。
いったい何の話だ?オレが意味が分からずに頭を傾げると二人はまた笑う。
今日は二人に勉強を教えてのもらうために人気のない図書室にいて、今二人が来たところだ。

「可愛い耳が付いてるよ」
「東堂のを借りたのか?」
「……え?」

頭を触れば確かに耳がある。やばい、これ地耳じゃねえか、人間の耳じゃない!
さっと頭の上にある耳を手で覆って笑って誤魔化す。

「あ、ははははは!!二人を驚かせようと思ってネ!」
「確かに驚いた、荒北くんがそんなの付けるなんて」
「しかしお前が勉強を教えてほしいと言ったのに、どうした」
「ちょ、ちょっとした休憩というか、ネ!ちょっとコレおいてくる!」

頭を押さえてダッシュで走り去る。
後ろで朱堂ちゃんが「え、ちょっと!?」と声がするけど気にしてられない。
走って寮に戻る、というか、仲間のところに戻る。仲間と言っても同じ種族ではなく、同じ側の仲間のところだ。今までこんなことはなかったから多分気が動転してたんだと思う。急いで山神である東堂を呼び出して「知らないうちに耳が!」と言えば「うるさい!」と返された。

「して、耳がどうしたのだ。オレは今勉強をだな」
「オレだってそうだヨ!ただ、耳が」
「耳?そういえば荒北、お前どうして耳があっちなのだ?」
「それをだな!」
「靖友?ちょっとうるさいぞ」

そこに来た新開はオレを見るなり「耳、それいいの?」と聞いてくる。
そうだ、この耳が原因なんだよ。
朱堂ちゃんには可愛いねって言われるし、福ちゃんも笑ってた。いや、それはいいんだよ、この前のハロウィンの延長だと思ってもらえれば。一緒になってイベントを楽しんだわけだし。

「戻んねぇんだよ!」
「…何がだ?」
「もしかして人間にうまく化けれないってことか?」
「それは一大事だな」

東堂が俺の耳を押し込めるように頭を押し付けるけど戻る気配はない、新開に関して言えば力任せで首が折れるかと思った。
三人でギャーギャー騒ぎながらオレの耳をどうにかしようとしていると、オレの携帯がブルブルと着信を教える。見れば朱堂ちゃんとディスプレイに書いてあったメールには「どうしたの?まだこないの?」と書いてある。

「朱堂と何か約束か?」
「そういえば勉強教えてもらうとか言ってたな」
「そうだヨ!あーもう!!」
「朱堂だけか?」
「福ちゃんも」
「寿一も一緒か…こっち側だったら誤魔化し様があるけど…寿一はな」
「荒北、お前はどう理由をつけて戻ってきた」

二人を笑わせようと思ってドッキリ。で、逃げてきた。と簡単に説明する。
この耳はそのハロウィンで東堂がつけていた猫耳に似ているから、まあ誤魔化せてはいる。オレの自身は狼というか犬の一族だから猫じゃない。

「つか、メールどう返そう…」
「オレ電話しようか?朱堂に電話して、靖友タンスに小指ぶつけて悶えてて行けそうにないって」
「おお、それは名案だな隼人。それでいこう」
「は!?せっかく朱堂ちゃんと福ちゃんが二人でオレの勉強見てくれんのにか?!」
「仕方あるまい。その耳のままではお前が危ないんだぞ」
「そうだよな、この学校での靖友の威厳と、こっち側の存在がな」
「……っくっそ」

オレの携帯を出して新開に渡す。新開は「オレの使うからいいよ」と言って自分の携帯対を出して朱堂ちゃんに電話をして、さっき言っていたようにオレはタンスに小指をぶつけたことになった。

『え、荒北くん大丈夫なの?』
「しばらく動けないみたいだ。大丈夫、オレが介抱するから朱堂は寿一と勉強してていいぞ」
『でも…うん、わかった。福富くんにもそう伝えるね。荒北くんにお大事にって』
「わかった。じゃあ切るな」

あー…福ちゃん朱堂ちゃん…。ごめんねェ…オレからお願いしたのに…。

「何をしょぼくれている、そんな暇はないぞ荒北」
「そうだぞ、下手したら寿一が心配してくるからな。できるだけその耳を早くどうにかしないとな」
「っくそ…」

自慢の耳も今は凄く憎らしい。
どうして隠せないんだ。



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