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「#幼馴染」のBL小説を読む
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 ああ、と納得

※荒北妹



あれから数日して荒北さんの妹の荒北がマネージャーの仮入部をしている。
最初はやっぱり誰もがあの荒北さんの妹だっていうのが半信半疑だったようだけど、今では荒北が荒北さんを「お兄ちゃん」と呼んでいるので、それが普通になっている。
それはそれは似ていないことこの上ない。
ついでに二人とも荒北なので、名前で呼んだり妹と呼ばれたりしている。

「…なあ、なんでお前この部活のマネの仮入部してんの?」
「特に理由はないけど…あえていうなら」
「言うなら?」
「良い体の男子が多いから!なんてね」

あははは。と荒北、基奏は雑用をしている。今までマネージャーは1年が兼用でしていたので、それが少しだけ奏にやってもらっている形だ。でも結局は自分たちの仕事に変わりはなく、ただローテーションが緩くなっただけだ。

「私空手部だったんだけどさ」
「おう」
「新人戦で大怪我しちゃったわけよ」
「…おう」
「日常生活には支障はないんだけど、部活するにはねー」
「どうして空手部のマネじゃないんだよ」
「だってさ、してるの見てるとやりたくなるじゃない?」

確かにそうだ。そして自分の軽率な質問に嫌気がさした。奏は良い奴で、真面目だ。
部活だって一生懸命やっていただろうし、その怪我でしばらく学校を休んでいたのも知っていた。何部かは正直興味がなかったから知らなかったけど、噂では中学でかなりいい成績を残していたらしい。

「……嫉妬、しちゃうんだよね」
「悪い、変な事聞いた」
「いいよ。でもさ、それお兄ちゃんと同じなんだ。お兄ちゃんも肘怪我して部活止めて、それから荒れて荒れて。で、ここ来て自転車部に入って、変わった」
「………」
「それでさ、誘われたんだ」

兄妹で一緒の部活ってのもねー。と笑っている。
荒北さんは意外とシスコンか?と思ってみるものの、自分と似たような境遇で気にするのはまあ普通なのかなと思うことにした。
それから奏は普通に部活をこなし、上級生にもなじんだ様子で笑っている。

「どう、奏ちゃん部活慣れた?マネージャーできそう?」
「みなさん優しいので今のところは頑張れそうです」
「優しいのは今だけかもしんねぇから注意しとけよ奏、特に新開にはな」
「オレはいつだって優しいだろ靖友!」

荒北さんの妹のくせに…というと、なんだか変な感じだが、奏は人当たりがいい。いつもニコニコしているし、荒北さんみたいに言葉遣いが荒くない。それに気遣いもできるし、何より男だらけの中の女子だ。何かと関わりたいという下心を持っているヤツも中にはいるんだと思う。それを追っ払うわけじゃないけど、荒北さんが吠える吠える。

「なんだ黒田、なんか文句でもあんのかァ?」
「いや、別に」
「………」
「お兄ちゃんもそんなに喧嘩腰にならなくてもいいんじゃない?」
「うっせ」
「これでも手が出なくなったからいいのか。福富さんに感謝感謝」

と言う事は、奏にも被害があったと言う事なのか?と疑問がひとつ。
今の荒北さんから考えると、ありそうだけど、でもなさそうだ。

「二人は、ケンカとか」
「してたし、今もたまにするよね」
「してもお前に勝ったためしないけどねェ奏ちゃん」
「やるからには本気だし」
「聞けよ黒田、こいつ関節キメてくるんだぜ、どう思うよ」
「ダメージ大きい方が私に損害ないんだもん」

やるからには徹底的に潰したいじゃん?

あ、似てるかもしんない。



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