※ あのことこのこ
「あ、黒田いいところに」
「…なんだよ」
「黒田って自転車部だよね、荒北靖友って人呼んでほしいんだけど」
「荒北さん?なんで」
「細かいことは気にしない気にしない」
お願い!とパンと手を合わせる。
コイツは同じクラスの荒北。むかつくことにあの荒北さんと同じ苗字だ。
荒北さんは腹立つけど荒北は良い奴だ、だから聞いてやりたいけど、あの荒北さんに声をかけなきゃって言うのが嫌だ。
「黒田?」
「いや…あ、おい塔一郎。ちょっと荒北さん呼んでくんねえ?」
「え…いいけど。あれ、荒北さんどうしたの」
「荒北が荒北さんに用事なんだってよ」
「わかった、ちょっと待っててね」
ごめんね!と荒北は塔一郎に声をかける。
「もしかして、どこか行くところだった?ごめん、知らなくて」
「いや、そういうんじゃねえけど…」
「…そう?」
言葉を濁すと荒北は頭を傾げる。
荒北はオレが荒北さんを苦手、というか嫌いなのを知らない。まあ部活も違うから仕方のない事なんだけど。
「…おい、来たぞ」
「げ、荒北さん…」
「なんだ黒田かよ、オレに用事って」
「違う違う、私」
「何の用だ」
「これ、お母さんがお兄ちゃんにって。あと心配してたよ、たまには帰ってきなさいって」
「うっせな」
「……え?」
「ん?どうかした?」
「お兄ちゃん…?」
荒北が持っていた荷物をほいほいと渡しては荒北さんが持つ。何か持っているなとは思っていたし、もしかして告白か?と半信半疑にいたらそれ以上のものだ。
ちょっと待て、今お兄ちゃん?は?
「奏、お前黒田とどういう関係なわけェ?」
「同じクラスだけど。黒田にお兄ちゃん呼んでって頼んだんけど泉田くんに」
「へぇ…黒田、お前奏と同じクラスなんだァ」
「……てことは、荒北、お前荒北さんの妹!?」
「え、うん。そうだけど…」
「嘘つけ!全然似てないだろ!!」
荒北ズは顔を見合わせてからオレの顔をみる。
全然似てない、ビックリするぐらいに。似てるって言ったら髪質くらいだろ。
「嘘って…言われても………」
「黒田…奏はオレの妹ちゃんなんだよ」
「でも筋肉がつきにくいっていうのは似てるよね」
「お前もつかねえもんなァ」
「…黒田?」
ふらふらとしながら部室に戻る。
あの荒北と荒北さんが兄弟とかありえない。荒北さんみたいにオレをエリートとかいって馬鹿にしないし、真面目だし、気さくだし、良い奴だろ。
ローラーに乗る気分じゃなくて、隅っこで唸っていると新開さんが心配してくれたのか声をかけてくれる。
「どうした?腹痛いのか?」
「あ、いえ…荒北さんが」
「靖友が?そいうや居ないな…どこ行った?」
「外で、女子と…」
「なに!?尽八大変だ!」
新開さんは東堂さんを連れて行ってしまった。そんなことは今は関係ないんだ、どうして荒北は荒北さんの妹なのなかっていう…それだよ。
今までいい同じクラスのヤツだったのが、あの先輩の妹だったっていう真実だ。
「おいテメェ黒田!!誰が告白されてるって!!?」
そんな怒鳴られるなんて今のオレはまだ知らない。
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