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 仲良くない話

大きな溜息が出た。
どうして私はこんなことしてるんだろう。洗濯機をまわして、ボトルにドリンクを用意して、これから記録を取るからとその荷物を用意して。
誰かのせいじゃなくて私のせいなんだけど、どうしてこうなったんだろう。
友達がいればそうならなかったのかと言われると、そうじゃない。私がちゃんと断れなかったからいけない。

「もうすぐ記録とるんだろ、まだここにいて大丈夫なのか?」
「は、はい!…今、行くから…うん」

驚いて振り返れば新開くんがいる。今の私から見れば諸悪の根源、と言っていいかもしれない。でも彼は悪くない、悪いの断れなかった私だ。
今日は大会にでるメンバー選出らしく、私以外が全員参加の為に私の仕事は膨大だ。グループ分けされているけど、記録の為に私と同じマネージャーをしてくれる人はいない。

「道具持つの手伝うよ、今日皆でちゃうし」
「あ、ありがとう…新開くんは、いいの?準備…」
「一緒に運ぶくらいで時間なんて他の人と変わらないから平気だよ」

これ持てばいい?と道具を纏めていたカゴを指さす。
ドリンクは各自持って行っているので私が持っていくのはそのカゴとタオル一式。
たぶんそのカゴが重いと思って指さしてくれているんだろう。実際そのカゴには記録を取るための機材が入っているから重い。私が運ぶとなると大変で時間がかかる。

「でも、自転車持っていかないとでしょ?…それに、重いし」
「寿一、オレの自転車頼むー」
「どうした」
「朱堂の手伝いしようと思って」
「そうか。ならオレが運ぶから朱堂を頼む」
「おう」

2台の自転車を引いていく福富くん。その後ろから新開くんが重いカゴを持ち上げて「行こうぜ」と声をかけてくる。重い荷物を持つは嫌だったからその一言は嬉しいけど、これから記録を取ろうって時にそんなことしてもいいのか、というか頼んでいいのかと私がオドオドしていると「早く行かないと」と言われてしまった。
タオルの入った袋をもって新開くんの後ろを歩くと、「どうして後ろ歩くの?」と言われたので「な、なんとなく…」とわけのわからない事を言うと新開くんは気にする様子もなく「そっか」と言ってくれた。誤魔化し切れてないけど、たぶん誤魔化されてくれたんだと思う。

「部活慣れた?」
「……ど、どうだろう。中学と全然違うし…」
「きついもんな」
「そ、そう…だね」

何かと話かけてくるけど、やめてほしい。話すことなんて正直ないし、そっけない返ししかできないから。
記録をするところまでずっと何かしら話しかけてきて、私はそれにどう答えていいかわからなくて「そうだね」「どうかな」しか言っていない気がする。
荷物を置いて、機材をセットしようと思って荷物を置いて、小さく新開くんに「道具、ありがとう」とお礼を言うと嬉しそうにしてくれた。

「いつでも手伝うからな」
「う、うん…ありがとう」
「セッティング手伝おうか」
「大丈夫…それは、一人でできるから。が、頑張ってね」
「おう!」

走って福富くんのところにって自分の自転車を受け取り、調整をはじめているらしい。
私も自分の事をしないとと思って機材のスタンバイを始める。最初は意味の分からないコードとかに混乱したけど、これも回数だからと先輩に指導されて何度も練習させられて、今はすぐできるようになった。パソコンを起動させて、記録するプログラムを起こして、連動する機材の確認をして記録会の準備をする。番号が間違っていないか確認しながら最初のグループの人たちに渡して監督が来ると記録取が始まる。

記録が終われば各自の練習になり、主将と副主将と監督と私で記録をみてどうするかを話し合う。私は会話には加わらないで言われた記録を提示するお手伝いだと部長がいっていた。だから私は難しいことを考えないだいいからと言われている。どう思うと聞かれたところで私には答えることができないので黙ってしまうけど。
その話し合いに必要なパソコンを抱えて、他の器具類は私と同じ1年生が片付ける。記録会が終わればマネージャーの仕事も兼用するのがルールとなっている。

「洗濯するやつか」
「…え、あ、うん。話し合いが始まる前に洗濯しようかなって、思って」
「オレが持っていく。洗剤は何処だ」
「え、あ、…い、いいよ。私する、から」
「1年の仕事だから気にするな」
「そうそう、オレも手伝うし気にしないでよ」
「朱堂は記録の話し合いがあるんだろ、気にするな」
「…えっと、備品入れの、下の段にあるから…今回は柔軟剤もいれてくれると…た、助かるな」
「わかった」

それから話し合いが行われ、私は言われた通りに記録を出して参加というか手伝いをした。グループ内で何回か僅差の記録が出ているのでまた再度記録会をしようということになり、後日することになった。今度は僅差の人だけなので私だけが準備ということにはならないそうで、それはいいけど嫌だなと思った。

「わ、干してくれたんだ…」
「ああ、時間があったからな」
「朱堂は一人でこんな量干してたんだな、疲れるだろ?」
「…でも、今日はまだ少ないから」
「!」
「あ、でも、他の人とか、手伝ってくれる時もある、から…」

正直嘘だ。私の手伝いをしてくれるのはこの二人と東堂くんくらいだ。他の人は先輩の手前してくれるけど、基本的には自分の事しかしていない。私もされても正直困るし、どうしていいかわかないからそれでいい。一人で大変だけど、男子と喋るより一人の作業の方が楽だから。



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