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「#エロ」のBL小説を読む
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 正体を見破られた

「靖友、おめさん…彼女、いたのか…!?」
「あぁ!?」

IH初日。地元開催ということで箱学の生徒家族というか、関係の人間で会場は賑わっている。それはメンバーであれば家族がくるし、メンバーではなくても応援に家族はくるし、学校の友達だって来ている。それはオレだって寿一だって例外じゃない。
靖友の前には犬を連れた綺麗な女の子がいるんだから、それは彼女としか言えない。

「バァカかよ、これのどこが彼女だっての!」
「こっちこそ願い下げだ馬鹿」
「その口調、奏か!」

よくよく見てみると、確かに奏だ。いつも見る服が制服か体操着だったからかわからなかった。そしてたぶん化粧もしているんだと思う。いつか見た女子の変身と少しだけダブる。

「同好会に犬いたっけ」
「靖友の家で飼ってるアキちゃん」
「つうか、なんでお前がアキちゃんと一緒なわけェ?」
「おばさんに押し付けられまして。『奏ちゃん、靖友がアキに会いたいみたいだからお願いね!私たちちょっと色々見てくるから』だそうよ」
「……そりゃ、悪かったナ」
「ということで、はい」

リードを渡して奏は「じゃあね」とどこかへ行こうとすると犬が嫌だ嫌だというように奏に向かって鼻をキューキューならして可哀想な雰囲気を出す。

「アキちゃん!ちょっと止めろ、つうかなんでオレじゃなくて奏が良いんだよ!」
「アキちゃん、お兄ちゃんと一緒にいてよ」
「お兄ちゃん!」
「アキちゃんのお兄ちゃんって意味だよ新開、笑ってんナ!」
「アキちゃんはお兄ちゃんより奏が好きなんだな」
「うっせ!!アキちゃん!オレの何が嫌なわけェ!?」

奏が犬の頭を撫でて「良い子にしてないと…もう撫でてあげないよ」というと犬はぴたりと鳴き止む。その態度に靖友は「アキちゃん!」と怒る。飼い主である自分よりも奏の言うことを聞くのが面白くないんだろうな。奏はそんな靖友を無視して犬を撫でて「良い子良い子」と褒めている。

「じゃ、頑張って」
「がんばれとか言ってんじゃねえよ」
「社交辞令」
「冷徹女さっさと失せろ!」
「言われなくても」
「なあなあ奏、それならオレとあっち行こうぜ、案内するから」

奏が嫌な顔をする前に奏の手を取って歩き出す。後ろで靖友が何か言っているけど気にしない、どうせまだ時間には余裕があるし。
案内に乗っている程度の事しか説明はできないけど、それでも十分だと思ってあっちが控えになってるからとか、あっちはステージで後でインタビューを受けるとか、出店は何が旨いとかを一方的に話す。どうせ奏は黙っているか「そんなの聞いてない」とかしか言わないんだから気にしない。

「レギュラーなのにいいの」
「準備はできてるし、調整にはまだ早い」
「そんな時間に余裕がるとは」
「今は個々で気分を高める時間ってやつさ」
「ふーん、余裕ね」
「そんなことない」

そうだと思って奏と向かい合う。やっぱり今日の奏は化粧をしているんだと思う、制服姿よりもずっと可愛いと思う。どこが、なんてことはわからないけど、雰囲気が違う。

「一番最初に箱学のインタビューがステージであるんだ」
「へえ、そうなの」
「探すから見に来てよ」
「……まあ、いいけど」
「本当か?今日はオレ寿一に言われてるから出番はないけど明日あるから、言うところにいてよ」
「……気が向いたらね」
「約束な!」
「ちゃんと言わないと行かないから」

直線の鬼は嘘は言わないぜ!とバキュンポーズをすると奏はまた微妙に嫌な顔をしてオレを見る。もうそれには慣れているし、奏がそんな顔をしても結局はなんだかんだで「いいよ」というのも知ってる。

「今年も優勝して最後のステージ飾るから、明後日もな」
「………楽しみにしてる」

もしかして、ちょっとデレた?



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