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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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 電波少年

「山岳ー!」

山?と頭をかしげそうになった時に真波くんを引っ張っている女子が目に入った。よく真波くんが言っている委員長さんだろう。そうであれば納得だ。

「あ、朱堂さんだー」
「勉強でもサボったの?」
「ちょ、山岳!」
「委員長、部活のマネージャーで3年生の朱堂さんだよ」
「こんにちは貴女が委員長さんね。真波くんは委員長さんに感謝しないとね」
「あ、いえ…そんな、私は委員長として」

わたわたと顔を赤くして慌てる委員長さんとは反対に真波くんはあははと間の抜けた笑顔をして頬を掻いている。

「朱堂さんはどこいくの?」
「私は顧問の先生に部活の用事だよ」
「いいな、オレも行きたーい」
「その前に真波くんは真波くんのすることをしましょう。委員長さん、よろしくね」
「は、はい!ほら!」

ズルズルと引き摺られる様に委員長さんに引っ張られ、能天気には「ばいばーい」と手を振っている真波くんに私は引きつった笑顔で手を振り返す。
私は彼が走っているのをあまり間近で見たことはないし、どんな走りをするかはよく知らない。でも、福富くんは彼に一目おいている。だから凄い人なんだと思う。普段はボケーっとしている印象しかないけど。




「こら真波くん、遅刻だよ」
「あ、朱堂さん」

ごめんなさい。と笑う真波くんに私は溜め息をついた。憎めないというか、まあ東堂くんと並んでファンクラブがあるんだから仕方がない…のか?顔は優しいし、女子がキャーキャー言うのはわかる。でも東堂くんはわからない。一緒に居すぎているからかも。

「ほら、早く練習に行く。東堂くんに叱られるよ」
「はーい。朱堂さんはマネージャーの仕事ですか?」
「それ以外にあると思う?」
「ないですね。オレもお手伝いしちゃ…」
「東堂くんは山道に」
「いってきまーす!」

素直だなぁ。なんて思いながら「いってらっしゃい」と声をかける。大体今日の練習予定は昨日のうちに言われているはずなのに…。



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