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 真逆のタイプ

「ウサギ?それなら生物部…今は生物同好会か、それが使ってる飼育小屋を使わせてもらったらどうだ」

そういわれて飼育小屋のある構内の隅にやってくる。見れば意外と立派な作りの小屋には鶏が小さな鳴き声を上げてトコトコと歩いている。その小屋の付近には小屋を掃除用具入れらしきものがひとつ。黙ってウサギを入れて大丈夫なのだろうかと、その小屋を物色するように見て回る。するとその出入り口には南京錠がかかっている。それもそうだ、逃げたら大変だし、狐とか犬が来るかもしれない。

「…ていうか、その生物同好会の先生って誰だよ」
「生物の先生の澤野先生です」
「うわ!」

独り言のつもりで言った言葉に誰かか返事をする。誰もいないと思ったら人がいた。
驚いて振り返ると、きりっとした、よく言えば模範生みたいな女子生徒がいる。

「何がご用ですか」
「え…っと」
「何の用もなくこんなところに来るなんてことないでしょう」
「えっと、君は?」
「その生物同好会の人間です」

驚いて黙っていると、その子はオレを一瞥してから掃除用具を取り出してから小屋の南京錠を開けて掃除を始める。どうやら本当に彼女は同好会の人らしい。別に疑っていたわけではなく、いいタイミングすぎて驚いただけだ。

「…制服のままで、入って平気?」
「はい」
「あの、同好会の人、なんだよね」
「はい」
「あの、オレ実はウサギを保護して…先生に相談したらここって言われてさ」
「ご自分で保護したのだらご自分で世話をしてください。私は飼育員ではありません」
「それはわかってるよ、それで場所を」
「ご覧のとおりここは鶏小屋です、ウサギ小屋はご自分で用意してください」

鶏がコッコと言いながら出入口に近づくと、その子は「ダメよ」と一言。するとどうだろう、その鶏は足を止めてからくるっと方向転換して、その子の足元に戻る。

「すごい!」
「3歩歩けば忘れると言われますが、そんなことはありません。意外と頭がいいですよ」
「そうだ、オレ新開隼人。君は?生物同好会の」
「……朱堂奏です」
「ねえ朱堂さん、オレそういう生き物のことよく知らないから教えてよ。ウサギの小屋もなんとかするから」
「自分で調べてください。図書室に行けば本なんて沢山ありますし、インターネットだって使って自分で調べてください」

お断りだ。というのを遠回しに言われ、固まっていると鶏が鳴く。まるで朱堂の言っていることに賛同するように。
それに対してまた朱堂が「あんまり煩いと苦情が来て処分されるよ」というとぴたりと鳴き止む。

「じゃ、じゃあオレも一緒に世話するから、朱堂さんも一緒に鶏の世話しようよ」
「ウサギの世話は部活外活動です」
「ちが、違うよ。オレがウサギの世話するから、その時に」
「…部活、なにされてるんですか」
「自転車競技部」
「そんな時間あるんですか?」
「作る!ウサギの世話初めてだから、誰もいいから一緒に話してくれる人、欲しいんだ」
「………いいですけど、私待ってなんていませんよ。他にも動物がいるので」

次の日、朱堂さんが同じ学年だということを聞いてクラスに行き、朱堂さんを連れて無理矢理図書室に行ってウサギについてしらべ、放課後には朱堂さんと一緒に近くのペットショップやホームセンターを巡った。



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