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 白のお返し

※チョコの涙続き


「ふおおお…!」

まさかまさか。まさかバレンタインのお返しが貰えるとは思っていなかった私はとても感動している。可愛いパステルブルーの小さな紙袋にはパステルピンクの細いリボン。可愛い…

「い、いいの?」
「いいのいいの。俺達からのお返しだし」
「可愛い…!」
「袋だけで感動すんなヨ…」
「皆で選んでくれたの?」
「当たり前だろう!この東堂尽八が先人を切り選んだんだ」
「おおおおお…」
「バレンタインのケーキ、美味しかったぞ」
「ありがとう。私ホワイトデーに男の子からお返しもらったの初めて!」

可愛いね、可愛いね。と言って袋を眺めていたら「いい加減中身を見なよ朱堂ちゃん…」と荒北くんに呆れた様子で言われてしまった。いやしかし、勿体なくて開けられない…私の一生でこれから先にまたとない出来事かもしれない…

「私は今とても感動しています…」
「見たらわかる」
「これを女性客の中、男子高校生の集団が選んでいる光景を想像すると…」
「嫌な想像…」
「恥ずかしい思いをして…」
「恥ずかしくなどない。皆がこの俺に目を奪われる光景は実に気持ちの良い!」
「東堂くん、それ多分違う注目だよ」
「え」
「うん」

開けろヨ!と荒北くんに改めて言われたので、失礼して開けさせてもらう。
開けるとそこには袋と同じ色をした箱が、リボンを掛けられてチョコンといる。そこまで可愛い…!

「箱が入ってる!」
「中身を開けるんだ朱堂」
「開けるのがもったいないよ新開くん」
「腐るヨ」
「生物!?」
「違う、焼き菓子だ」
「福ちゃん言っちゃダメだろ…」
「クッキー?」
「聞かずに開けろ朱堂」

最後には東堂くんにまで言われてしまった。
袋から箱を取り出して、掛かっているリボンを外す。久しぶりだと思う、こんなにわくわくするのは。
箱を開けてみると、猫や兎、熊などの動物の顔をしたマカロンだ。

「すごーい、可愛い!」
「可愛いしか言ってないな、おめさん」
「だって、可愛い!すごーい、すごーい」
「気に入っただろう」
「うん。ありがとう皆。わー」

勿体なくて食べられないね。何て言えば全員に「食べろ」と突っ込まれてしまった。食べ物だから食べないと勿体ないんだけど。

「人気店のヤツだからな」
「へー。他の女子にもこんなに可愛いのあげてるの?モテる男子は大変だね」
「そうだとも。まあ俺は仲間である朱堂とファンクラブの女子とではちょっと違うからな。朱堂は仲間で日頃の労いは入っている」
「まあ、俺は朱堂ちゃんからだけだから楽なんだけど」
「部活仲間と義理じゃ扱いはちょっと違うのは同感だぜ」
「俺も朱堂だけだから比較的楽だった」
「皆、本命の子には良いのあげなきゃだめだからね…でもこんなに可愛いの選べるなら安心だね…。彼女ができたらこれくらいは最低限選んでね。悩んだら相談くらいのるよ」

それにしても感動の一言。
私が作ったケーキなんて、半分趣味の延長。クラスの友達と手作りお菓子の交換をしたのが始まりで、それから毎週月曜日はお菓子の交換会が始まっていた。
ホクホクとその小箱を眺めていると福富くんが「喜んでもらえてなによりだ」と声をかけてくれた。

「これは私も次頑張らないとだね」
「なに、次もあんの朱堂ちゃん」
「来年。あ、リンゴのタルトもあったねー」
「福だけのリクエストではないか」
「え?じゃあなにかリクエストあるの」
「…」
「…」
「…」

見事なまでの沈黙に私は笑ってしまった。
確かに男子にお菓子の話はちょっと難しい。女の子だと結構盛り上がるのに。

「今度は部活で配れるくらいになれるといいな」
「ヒュウ」
「別に悪くないと思うぞ」
「えー、だってなんか、恥ずかしいよ。なんていうの?恥ずかしい」

その日の帰り、鞄に入れたら形が崩れそうだと思って鞄から出して部活に行ったら先輩に「それホワイトデー?誰からの」と聞かれ、一緒にいた福富くんがまさかの「俺達からです」と言ってくれたのには叫んでしまった。
来年は強制的に部活全員分用意しなくてならなくなり、誓約書まで書かされてしまった。
福富くんのバカ…と思ったけど、まさか言えないので睨んでおいた。



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