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「#幼馴染」のBL小説を読む
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 夜と朝の間の帰宅計画

※知らない話 続
※待宮がいます。偽広島弁


「おう、なんじゃ小野田も一緒か」
「一緒じゃ」
「奏ちゃん、んな真似すんなって」

食堂で金城、荒北、奏が一緒に昼とを取っていると待宮が隣の席に座る。
奏と待宮は直接の知り合いではなかったが、金城や荒北と一緒にいると声をかけらるようになり、今ではなかなかに親しくなった。

「お、弁当か。そんなんで足りんのか?」
「余裕余裕」
「いや、でも少なすぎるだろ。オレの何かいるか?」
「だからね、大丈夫だって。金城くんサークルで自転車乗るんでしょ」
「オレの唐揚げやるよ」
「荒北くんは自分で食べなよ…待宮くんがそんなこと言うから」
「だって少ないじゃろ。ほれ、ワシのもやるよ」

奏がやめてと言われても、周りの男がそれを聞き入れずに奏の弁当の上に自分たちの昼食を一つずつ置いてく。男たちから見たら小さい弁当箱の上が山になり、奏は小さく「マジか…」と呟く。

「小野田は休み帰るのか?」
「実家?うん、帰る予定。待宮くんは?」
「おう、可愛い彼女が待っとうからな」
「彼女いるの?意外…」
「どういう意味じゃ」
「そのまんまだろ。奏ちゃん、ほらこれも上げるから食べな」
「ぎゃーす」

荒北の追加に奏が叫ぶと、面白がって金城までもが「これも食べると良い」と一緒に追加してくるではないか。
奏の表情は面白う程よく変わる。だからこそこうやってオモチャにされてしまうだが、本人は気づいていないのだろう。

「もう本当やめて…腹が破裂するから…」
「それは困ったな」
「思ってないくせに…ねえねえ待宮くん、待宮くんの彼女ってどんな子?」
「まず可愛えじゃろ、そんで次に可愛え、んで次に」
「奏ちゃんはいつ帰んの?」
「迷ってるんだよね、金城くん帰る?」
「ああ、その予定だ」
「おい小野田、お前が聞いてきたんじゃ、最後まで聞けや」
「思った以上の惚気だったから止めた」

ぐぎぎ。と奏を睨む待宮だが、奏にはどこ吹く風なのか気にしてはいない。
金城は携帯を取り出し、そのカレンダーを見ながら「そうだな…」と考え、この日かなと日にち言う。

「意外と早く帰るな金城」
「後輩の顔を見たいしな」
「あ、ねえねえ金城くん。それなら途中まで一緒に帰ろうよ」
「なんじゃ、小野田と金城は方向同じか?」
「同じ千葉なんだ。ってコラ、また私のお弁当に食べ物入れないで」
「そうだな、一緒に帰るか」
「よっしゃ!これで安心だ」
「安心?帰るだけだろ?」
「いやー、寝過ごしたりとかの心配がさ」

奏ちゃんたまにおっちょこちょいだもんね。と荒北が構えば奏はうるさいな!と自分の弁当の中のひとつを何気なく荒北のプレートに戻すということをしていた。




「やったー!二人だから割引だー」
「奏はやりくり上手だな」
「え、そう?こういうのやらない?」
「面倒だからな」
「えー勿体ないよそれ」

何で帰るかという話になり、調べると夜行バスがあってそれが調べた中で一番安く、しかも二人なら割引!ということで奏が予約したのだ。
荷物を積み込んでしまえばもう楽なもので、席に座って寝る体勢だ。

「金城くんが隣でしかも寝ないとって思うと緊張する」
「そうだな、奏が隣は確かに緊張する」
「寝相には気を付けるけど、何かあったら起こしてね」
「ああ、そうしよう。奏もな」

しばらくすると奏は眠ったらしく、寝息が微かに聞こえる。どうやら物怖じすることなく眠れるタイプらしく、バスが多少揺れても気にせずに眠り続けている。金城もそれほどこういうことには繊細ではないが、慣れないので眠りにくい。しかし、隣の奏を見ていると不思議と自分が変なのではないかと思い、意外とあっさり眠ることができた。
目的地に着く前に奏は目が覚めたらしく、目覚ましをセットしていた金城が携帯のバイブレーションで目覚めると奏はいつも通りに「おはよう」と挨拶してきた。

「早いな」
「目が覚めちゃってさー。慣れないからだと思うけど」
「その割には夜はすんなりだったな」
「へへへ」
「飯はどうする」
「近くの開いてる店かな」
「家まではどうするんだ」
「バスがあったはずだから、それかな。金城くんは?」
「オレもだな」
「そうだ、それなら家までおいでよ。それで総北いけばいいんじゃない?」

荷物も置いてさ。ついでに私も一緒に行きたいし。と奏は楽しそうに提案する。
時間からしたら恐らくは坂道が部活に出掛けた後だろうし。と何か楽しむようにどうかと誘いをかける。金城は家に何時に帰るとも連絡していなしので、特に問題ないが、奏の家の事情もあるだろうと思っていると、奏はそれを感じ取ったらしく「気にしなくても大丈夫」と言ってくる。あの母親の娘だし、多少は破天荒な事をしても母親は許してくれそうだ。

「…そうだな、そうさせてもらおう」
「んじゃそうしよう。私のチャリのタイヤ空気入ってるかな、パンクしてなきゃいいけど」
「高校の時のか?」
「そうそう。私もチャリ通だったから」

結構可愛いんだよ、私のチャリ。と奏は笑った。



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