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 ツカレル

「あー…金城、お前そっちか」

荒北に声をかけられて冷やりとする。これは初めてではない、何度も経験している。そしてそれが今、誰かに知られてしまった。今の今まで誰にも知られていたなかった、それを。

「安心しろ、別に逃げたりしねぇよ」
「あ、荒北…いや、これは」
「お前憑いてるんだよ。憑かれてるんだ」
「疲れてる…?」
「疲労の方じゃない、憑りつかれてる方だ」
「何を、馬鹿な」
「知ってるサ、オレも経験者だからな」

恐る恐る荒北を見れば、「ほらよ」と軽くその姿を変化させる。
違う、オレはそんなんじゃない。だた、目が、皮膚が変化するだけだ。
荒北の手は大きく体毛が茂り、頭にはまるで獣の耳、そして眼光は鋭くなって牙が目立つ。

「な、なんだその姿は…」
「仲間だっつてんだろ、オレは。助けてほしいか?」
「助、ける…?」
「ああそうだ。そのままじゃ困るだろ、助けてやろうか」
「できる、のか?」
「オレが助けるんじゃない、朱堂ちゃんがする。ただ朱堂ちゃんは一度しか助けてくれない。二回目以降は有料だ」
「…箱学の、マネージャーか?」

信じるか信じないかはお前次第だ。とその変化させた姿をもとに戻す。
荒北は助けてもらったのか?それで?その姿で?でもコントロールはできている、オレよりも確実に。オレは何もできない。なってしまって怯えているだけだ。それがどうにかコントロールできるのであれば。そう思ってオレは荒北の言葉に頷いた。



「朱堂ちゃん、今度の休みに来るってよ」
「それまでオレはこのままか」
「いいんじゃねえの?サングラスして過ごせば」
「無茶言うな、講義がある」
「後ろに座ればいいんじゃねえの?そこまでオレが知るかよ」

オレの目は蛇の様な目になり、その周りの皮膚が鱗のように光っている。それは誰が見ても異常だろう。自分の姿に恐怖したのは高校に上がってすぐだった気がする。しかしそれは大抵一時的なもので、夜に起きた。しかし今はまだ夕方で、まだ日がある。そして今まで10分くらいで治っていたものがもう小一時間は戻っていない。それを荒北に見られてしまった。

「荒北、その、朱堂さんはどういう人なんだ」
「朱堂ちゃんは祓い屋って言った方がわかりやすいんじゃねぇの?」
「祓い、屋…?」
「そ。今はちょっとした理由でオレのご主人様でもあるんだけどよ」
「ご主人、様?」
「最初祓ってもらった時はタダ、オレには二回目があったからよ。金がねえから犬してんの」

朱堂という人物はIHで見かけた程度しか認識はなく、顔もうろ覚えでよく知らない。写真を見たことはあるが、それよりもメンバーの写真の方を見ていた。
次の休みまであと少し。その間に治ってしまえばわざわざ朱堂の力を借りる必要もない。それで終わってくれればいいのに。

しかしそれでは終わってくれず、一度も治ることなく奏と会うことになった。



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