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 髪色リボン

※続・夏が終わる




「ああああ朱堂さん…」

背の高い葦木場くんが泣きそうな顔で私を見ている。どうしたんだろう。いつもと同じに学校であったから声をかけただけなのに。

「髪が…」
「切るって言ってでしょ?」
「そうですけどぉ…」
「どう?似合う?」
「可愛いですけど…」

背が高いこともあって、私の友達は引いている。そして怖いのか「奏、私たち先行くからね」と逃げるように行ってしまった。そして今私は泣きそうな葦木場くんに悪戦苦闘している。なぜ泣きそうなのかと。

「髪が長い朱堂さんが…いなくなっちゃった」
「短い私と出会ったでしょ」
「ポニーテールとか、お団子とか…」
「……う、うん」
「葦木場?何してんだ」

猫背になっていた葦木場くんを見かけて声をかけてくらたしい黒田くんが顔をだし、私に気付くと「朱堂、さん…」とちょっと驚いた顔をする。髪切った当初って大体そういう感じになるよね、今朝の福富くんもそんなだったよ。

「黒田くん、葦木場くんが泣きそうなんだけど、私何もしてないからね」
「どうせ『朱堂さんが髪切っちゃった』とかでしょ」
「どうしてわかったの!」
「お前の事なんて大体わかるよ、朱堂さんが髪切るって言ってショック受けてただろ」

馬鹿じゃねーの。と言いたげな態度の黒田くんに、驚いた様子の葦木場くん。
私も驚いた。まさか葦木場くん、そんなに髪の長い人が好きだったとは。そういえばよく葦木場くんは「今日はポニーですね」とか「今日の髪型可愛いですね」とかよく言っていた。

「そっか…葦木場くん髪長い人が好きなんだね」
「あ、いや…そういうわけじゃ…」
「じゃあ、これをあげよう。新開くん対策に持ち歩いている飴」

はい、はい。と二人に飴をあげる。だいたい新開くんと会うと食べ物をねだられるので、これで対策をしている。まあ、他に友達にあげたり自分でも食べたりしているけど。スタンダードにフルーツです。

「あの、オレまで良いんですか?」
「あ、もしかして嫌いだった?」
「いいえ!」
「ならどうぞ、食べて」
「ユキちゃん!朱堂さんから飴もらっちゃった!」
「おー、よかったな」
「うん!」
「うん、葦木場くん、そっちの方がいいよ」
「え?」
「しょんぼりしているよりも、元気な方がいい。エースなんだから」

おっと、そろそろ行かないと次の授業に遅れてしまう。移動教室面倒くさいけど、たまにこうして後輩に会えるのは楽しい。
じゃあね。と手を振ると葦木場くんは元気よく手を振って天井に手がつきそうになっていた。

「葦木場、お前ちょろいな」
「え?なんで?朱堂さんから飴もらってうれしい」
「それがちょろいんだよ。朱堂さん超笑ってたじゃねえか」
「朱堂さんが笑ってて嬉しくないの?ユキちゃん」
「………お前本当ちょろい」

そんな話をしていたのは、私は知らない。



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