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 三人寄っても何もならない。

「…どうしたの、三人して」

テストが近い。
私はいつもの通りに学校の図書室でテキストやノートを広げていると、マナーモードにしていた携帯が震えた。見れば珍しく東堂くんからで、「今どこにいる!」という内容だった。それに「図書室」と短く返せばしばらくして凄い足音が聞こえて勢いよくドアが開いたのだ。

「…見つけた、ぞ」
「……朱堂」
「今、いい?」
「とりあえず落ち着こうか、そして恐いよ三人とも。福富くんは別?」
「寿一は、後で、くる…」
「助けてくれ、朱堂…」

時期を考えればテスト対策だろうなと思えば、やっぱりそうだった。だからカバンもっているんだね。福富くんは成績優秀だったし、それはあれか。福富くんだけじゃ見きれないんだな。「福富先生」と姿を見せた福富くんに声をかけると、少し驚いた様子でやってくる。

「生徒を見きれなくなっっちゃった?」
「ああ、いいか?」
「いいよ。じゃあ皆座ろうか」

息の荒い三人とは違い、福富くんは落ち着いて私の正面に座る。なんだかこう座ると面談を受けている気分になる。なぜだろう。
そんなことを思っていると、荒北くんは案の定福富くんの隣に座り、東堂くんは私に通路側に座れと私が座っていた椅子に座る。そして新開くんは隣のテーブルのところから椅子を持って来て座った。

「生徒が多くて緊張する」
「いつものメンバーだろう」
「こんなに一気に来たのは初めてだよ」
「そうか。ではどうする、手分けをするか」
「そうだね、文系理系でわける?」

荒北くんが数学ということで、福富くんは理系。私がその反対で理系を手伝うことに。まさかの新開くんが「オレ家庭科…」と言ってきたのは却下した。そんな栄養素は自力で何とかしろと荒北くんと東堂くんが叩き切った。

「はい、じゃあ文系しますか」
「朱堂オレは化学が…」
「福富くん、こっちにも理系がいるんだけど」
「朱堂…オレも化学」
「ってこっちも理系なの?じゃあ皆理系でいいじゃない」

じゃあ新開くんと東堂くんは化学ね。と私が引き受けることに。
二人のわからないところをさかのぼると、つい最近の出来事ではないらしい。今までどうしていたのかと聞けば、「暗記」と声をそろえて言われてしまった。私も暗記でやりすごしたことはあるけど、ここまで来ると凄いとしか言えない。

「凄いね…私暗記でそこまでできないよ…」
「朱堂に…」
「褒められた…、尽八、これは夢か」
「現実だ…」
「いや、呆れてるんだよ私」

本気で褒められたと思っていたのか、嬉しそうな顔が一転。これ応用とかどうしてのかを聞けば、部分点もらっていたと言われた。それもあるけど、うーん、これは少し荒北くんおデジャビュ。
とりあえずはこの二人に化学を教えないといけないので、二人が暗記で耐え始めたところからやり直す。

「ここはもう終わった範囲ではないか!」
「ここわからないんでしょ、ここ理解しないと今のところにもわからないよ」
「暗記してあるから多分行ける」
「じゃあこの問題してみようか」

二人に問題集から問題を指定してやってもらうと、見事にできない。暗記してあるからとか言ったのはどの口だと言いそうになったけど、この必死の表情でやめた。素直に勉強してほしい。
それからは福富くんがつきっきりで荒北くんの勉強を見て、私が二人に化学を教えた。二人が「何故こうなる」「ここはこう書いてある」と質問してくるのでそれを解決し、基礎となるものを覚えておけば後はそれが使えるから。とポイントを教える。

「明日それテストするから覚えておくこと」
「何!?朱堂、お前まさか小テストをするつもりか」
「テスト勉強できないだろ、栄養素覚えてない…それに古典もあるし」
「古典もあるの?でもコレできなくても同じだから。今日私が言ったことメモしてあるでしょ」
「…してない」
「尽八に、同じく…」
「教科書にマーカー引いたでしょ、こことかこことか」

言われたところを指してやると「ここだけ覚えればいいのか」と逆に聞かれてしまった。

「そこが今回のテストにかかるところの基礎だから。テスト範囲の基礎、これから勉強」
「…!」
「やーい、朱堂ちゃんに言われてやんの」
「うるさいぞ靖友…」
「荒北、今お前はそれを言える状態なのか?」
「…うっす」
「とにかく、明日はここの問題だすからね」

時計を見れば下校時刻が近い。
自分の勉強は家でもできるからいいとして、この二人の分の問題もそのついでに見繕っておくことにしよう。

「ねえ福富くん、いつもこんな感じなの?」
「いや、今回が初めてだ。だから朱堂にも頼んだ」
「朱堂ちゃん、オレも後で化学」
「…できることなら、一緒がよかったなー」

福富くんが「朱堂が切ない顔してるぞ」と言ったら三人が凄く焦った。



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