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 下に心

「…寒い」

朝から寒気はするし、鼻水もでる。これは風邪っぽいなーと思いながら独り言が出た。ありがたいことに今日は考査が近いということもあって部活はない。幸せだ。

「おはよ朱堂ちゃん」
「おはよー荒北くん」
「鼻赤いよ」
「風邪みたいでさ、鼻水がね」
「のどは」
「大丈夫。でも寒い」
「スカートだもんね」
「んー」

玄関から教室までの廊下で荒北くんが挨拶をしてくれた。見た目によらず荒北くんはいい人で、けっこう気を使ってくれる。
制服のポケットを何やら探って、「これあげる」とのど飴とかかれた飴を一つくれた。

「おー、いいの?荒北くんのど痛いの?」
「変な時に食べようと思ってたヤツ。今朱堂ちゃんの方が必要っぽいし」
「ありがとう」
「カイロ持ってんの?」
「ううん」
「じゃあ後で寮から持ってきてあげる」
「わー、すまんのう」
「朱堂ちゃんには色々お世話になってるからネ」

もうすぐ教室だというのに、私が巻いていたマフラーをきゅっときつく結ぶ。荒北くんなりに心配してくれているんだと思うけど、それはいらないかな。もうとっちゃうし。
一緒に教室に行くと同じクラスの福富くんが「荒北も一緒か」とちょっと不思議そうにしていた。

「福ちゃん、朱堂ちゃん風邪だって」
「おはー福富くん」
「熱があるのか」
「ううん、鼻水。あと寒い」
「ひざ掛けはあるのか」
「ないんだ…」
「オレの上着を使うか?」
「そこまで気を使ってもらわなくていいよ、ありがとう」

ちょっとどうしたのよ。と言いたくなるほどに過保護になているよこの二人。別に部活があるわけでもないからすぐ帰れるし、体育は休めばいいし。お昼は温かいものを食べるし。ちょっと二人の心配っぷりに引きながらも席につく。

「朱堂ちゃん、ティッシュは」
「BOX持ってきたよ」
「手洗いうがいをしてこい」
「え」
「石鹸を使え」
「あ、はい…」

なんだか目が恐い福富くんにおされ、カバンをおろしてマフラーを取って言われるままに手洗いうがいをしに行く。別に間違ったことをしろと言われているわけじゃないけど、なんだか不思議な感じというか、まさか親の様な事を言われるとは思っていなかった。
おとなしく手を洗って、ガラガラとうがいをする。友達が「風邪ひいだの?」と声をかけてくれるたびに頷いた。

「うがいと手洗いしてきたよって、なんで荒北くん座ってるの」
「冷たいかと思ってネ」
「福富くんと話したいんじゃなくて?」
「それもある」
「あー、はながでる」

持ってきたティッシュを出して鼻をかむと、ちょっとすっきりする。うーん、部活がないっていっても、これはちょっとツラいかも。それに友達にうつさないようにしないと。
けふん、とちょっと咳まででてきた。

「マスクマスク」
「持って来てんの?」
「うん、一応…あった」
「準備ができていても風邪をひいたら元も子もない」
「…はい」

座るからどいて。と言えば、荒北くんはすんなりと立ってくれた。まあそれはいつもの事だし、意地悪をしているわけでもない。いつもと同じにカバンからペンケースをだし、1時間目の授業の準備を始める。

「おーっす、あれ、朱堂風邪か?」
「おはよ新開くん。そうなんだよ、風邪です」
「じゃあ飴やるよ、ほら」
「ありがとー」
「なんだよ、のど飴じゃねえよかよ新開」
「のど飴なんて常備しないだろ」
「荒北くんは持ってたよ」
「準備よすぎだろ靖友」
「あとカイロくれるって」
「ひゅう」

あー寒いな。というと、おもむろに制服の上着を脱ぎだす新開くんに荒北くんが「朱堂ちゃんに引かれたくなったら止めとけ」と制止してくれたので安心した。
心配してくれるのはうれしいけど、これ本当どうしたの。ここに東堂くんがいたらどうなるの。

「だって朱堂、寒いって」
「その行動が寒いわ新開」
「……ついでにこれもやるよ。これ食って早く元気になれよ朱堂」
「わ、わあ…パワーバーだ」
「お気に入りだぜ」
「あ、ありがとう…」
「まあ朱堂には早く元気になってもらわないとな。勉強教えてください」
「それが目的か!」



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