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 背中合わせ鏡

※今泉と双子


「なんやの、奏ちゃんスカシと双子なんか!?」

そうだよ。と幹がニコニコと答える。
奏と双子である今泉俊輔はあまり似ていない。それは双子だと言われれば、なんとなく似ているような、そうでないようなというレベル。まったくの別のタイプの顔立ちではないが、はたから見てすぐに双子だとはまず思われない。

「似てへん…」
「うるせえな」
「よく言われるよ…あんまり私と俊輔似てないんだよね」
「そうそう。だからね、この前も今泉くんの事呼び捨てにしていたの見られてさ、『ちょっと今泉くんとどういう関係よ!』なんて言われてたんだよね、奏」
「そら災難やな」

部活の休憩時間の話だ。今泉と奏が親しげに下名前で呼び合っているのを見て、鳴子が茶化したのが最初だ。確かに同じ苗字だからややこしいと、今泉だけは苗字呼びだが、奏は名前で呼ばれている。

「でもね、私と俊輔は双子だからって話したら納得してくれたよ幹!」
「それは今泉くんに確認取ったからでしょ?」
「まあな。いちいち面倒なんだよ」
「でも双子って楽しそうだよね!」
「たぶん、小野田くんの思っているようなことはないよ」

双子の相方である俊輔と、小野田と鳴子は仲が良い。その関係もあって奏にも二人がどんな人間かが部活以外でも入ってくる。最初はその相方がアニメのDVDを見ていたのには正直驚いたが、一緒に観てみれば意外と面白く、それからは一緒に観ることもある。

「おっさん、奏ちゃんとスカシ双子なんやて」
「冗談ならもっとうまいこと言え」
「あの、本当です。俊輔と私双子です」
「生徒手帳見ますか」
「俊輔、それただ同じ苗字しかわかんないよ」
「住所書いてあるだろ」
「あ、そっか。でも今あるの?ジャージなのに」

ないな。とすぱっと諦める。
証人となるのは寒咲幹だけだが、これではここで彼女が「二人は双子」と言っても笑われておしまいだろう。それくらいに二人は双子というには似ていない。
世間ではその逆に兄弟姉妹で似ていることもあるが、この二人の場合、似ていない。

「なんや、あのオッサン。面白くないわ」
「慣れてるけどね、ああいう反応」
「奏も自転車乗れば似るかもよ」
「えー?」
「スタイルとか」
「やだ」
「なんで」
「見てる方がいい」
「やってこその自転車だよ奏」
「みんなが走ってるの見るのが好きなの」
「運動が苦手なだけだろ」

確かに校庭での体育の時、教室から眺めていると奏は確かにトロイ。持久走の時は最後から数えた方が早いし、何をしても最後からの方が早い。球技大会ではボールと顔面に当てたり、何もないところで蹴躓く。運動音痴だ。それもあって今泉俊輔と双子というのがあまり信じられていないところだ。

「でも、奏さんは今泉くんと双子なだけあって、背が高くて綺麗だよね」
「…え?」
「ほら、なんていうのかな。スラーッとして、シュッとして」
「なんや小野田くん、奏ちゃん困っとるで。こういうところスカシと似とらんよな」
「だ、だって…デカ女とかしか…言われないから…」
「奏背が高くて格好いいよ」
「幹の方が可愛いよ、私みたいに大きくないし…」
「なんや、奏ちゃん。ワイにケンカ売っとんのか?奏ちゃんといえど買うで?」
「そのケンカ、オレが買ってやろうじゃねーか」

今泉くんて、実はシスコン?と小野田が言うと、すさまじく否定していたが、鳴子と小野田、ついでに幹も「どう考えてもシスコンだろ」と心の中で突っ込んだ。



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