弱虫 | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

 眠り姫は眠らない

※きみの背中を知っていた 続き



『どういうことだ朱堂』

部活仲間に設定していた電話の着信音が鳴り響き、名前を見れば東堂尽八。なんだろうと思って電話にでれば、これだ。まず主語がないぞ東堂くん。世界は君を中心に回ってはいない。

「どうしたの、急に」
『どうもこうもあるか!巻ちゃんからメールがあったと思ったら、なぜ朱堂の写真が添付されているんだ!』
「ああ、巻島くんね、イギリスであった」
『…は?』
「ほら、休み前に言ってたでしょ?私イギリスに行くって。それで、会った」

巻ちゃん!とうるさい東堂くん。私の耳がキーンてなるからやめてほしい。
そうだよね、東堂くんが私に電話なんて珍しいと思ったんだよね、うん。

「ていうか、どうして巻島くんが東堂くんにメールしたんだろ…」
『何か問題があるのか?』
「だって、私が東堂くんに送ろうと思ってたんだもん。先越された…」
『…よもや巻ちゃんとのツーショではなかろうな』
「何故ばれた」
『それも来たんだ馬鹿者!』

酷い。どうして巻島くん…私が送りたかったのに!確かに巻島くんのでも撮ったけど…とったけどさ!私がやるって言ったの先にやっちゃうのは酷いと思う。というか酷い。これは後でメールで抗議しよう。時差を考えると電話は気が引けるし。

『……巻ちゃんは、元気だったか』
「え、ああ、うん。元気だったよ。巻島くんていい人だよね、私総北生だったら巻島くんのファンクラブに入ってた」
『そうだろう!そうか、やっと巻ちゃんの魅力に気づいたか朱堂!よし、それじゃあオレが巻ちゃんの魅力について』
「それはいい」
『早いぞ朱堂』
「だって生で良さを感じたもーん」

すると電話の向こうから東堂くんの高笑いが聞こえる。うーん、耳が痛い。というか、そろそろ切ってもいいだろうか、私は今眠い。
一通り笑い終わったのか、「では新学期に会おう、このことはよく聞かせてもらうからな!!」と一方的に切られた。うん、やっぱり東堂くんはこうだよね。巻島くん、お疲れ様です。と携帯を放り投げて私は寝ることにした。


「おはよう福富くん」
「ああ、おはよう」
「新年あけましておめでとう」
「ああ、おめでとう」

一人珍しいねー。といつもと同じに挨拶をして、席に着く。学校の椅子はひんやりとして、お尻を付けると身震いをしてしまった。

「寒いのか」
「うん、椅子がつめたい…」
「朱堂!朱堂はいるか!!」

ガラッと開いた教室の扉には東堂くんがキラキラとして立っている。クラスにいた女子は「きゃあ東堂くんだ!」なんて色めき立っているが、私からしたらまたうるさいのが来たよ…とため息をついた。福富くんを見れば、すこし哀れんだ表情で私を見ている。うん、私は哀れなんだと思う。

「おはよう東堂くん、あけおめ」
「あけましておめでとうとちゃんと言わんか!おはよう」
「ちゃんとあいさつは返すんだな」
「マナーだからな!!して、イギリスの話だが」

と私の前の席にドカッと座る東堂くんは私は腹の底からウンザリしていたので、これ見よがしに大きなため息をついてやった。しかしそんなことは東堂くんには通じず、「オレが美形でため息が出てしまったか、ハハハハ!」と逆に上機嫌になってしまった。
私は面倒になったので、カバンから巻島くんが写った写真を差し出して「これでも見てればいいよ」と渡してやった。すると福富くんも興味が出たのか、東堂くんに渡した写真を覗き始める。

「これは…総北の巻島、か?」
「うん、イギリスで会ったんだ」
「レースか何かか?」
「ううん、私がお世話になってた家のパーティーに巻島くんがいたんだよ」
「これ、パーティー?」
「その写真は、パーティーの次の日に一緒に出掛けて撮ったの」
「デートか!!朱堂ずるいぞ!お前ばかり巻ちゃんとデートをしおって!!」
「言われてみればデートかも!」

どうしよう、私デートしちゃったよ!といえば、福富くんが「…そうか」とちょっと困ったように呟いた。ごめんね、こんなこと言われても困るよね、と思って私も「ごめんね」と謝っておいた。
東堂くんはといえば、「オレも巻ちゃんとデートしたい!自転車で勝負したい!!」とか言っている。待って、私自転車の勝負してないから。自転車に乗れるって言っても、そういう自転車じゃないから。そしてもっと健全なやつだったから。

「お、朱堂。おはよう」
「おはよう新開くん」
「それなんだよ尽八」
「巻ちゃんinイギリス…朱堂から…」
「そっか、朱堂イギリス行ってたんだっけ。土産は土産」
「とりあえずクッキーにしてみた、後でね」
「ひゅう!」
「荒北くんは?」
「もうすぐ来るんじゃないか?」
「荒北くん早く来ないかなー東堂くんどうにかしてほしい」

そんな私の声なんて聞こえないくらい東堂くんは写真の巻島くんに夢中になっていた。
ちなみに、抗議のメールを送ったら「まだ送ってなかったのか?送ったと思っておちょくろうと思ってな、ワリィ。こっちも東堂から電話でうるさかった」とかえって来たので許してあげることにした。あと今度東堂くんのいるところであったら英語で会話してやろうと計画している。



prevnext