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 予定外の再会

「あれ?荒北くん?」
「んな!?」

わあ。と笑顔で小さく手を振る朱堂ちゃん。
長期の休みになって実家に戻っている面々。もちろんオレも例外じゃない。皆と同じように実家に帰って休みを満喫している。満喫と言ってもやることがないから普通の学校が休みなのと同じにロードに乗ってぶらぶらはしていたけど。

「久しぶりだね。もしかしてアキちゃん?お散歩?」
「う、うん…朱堂ちゃん、どしてこんなとこいんの?」

そう、何が不思議かと言えば朱堂ちゃんがいることだ。朱堂ちゃんはオレ達とは違って寮生ではない、いえば地元生。その朱堂ちゃんがここにいること自体がオカシイ。

「うんと、この近所に親戚のおばさんのお家があって、遊びに来てるの」
「へぇ…」
「荒北くんのお家の近くなのかな」
「ウン、家この近所ダヨ」
「すごい偶然だね」
「朱堂ちゃん、何してんの?」
「暇だからお散歩がてら近くにコンビニとかないかなって。そうしたら荒北くんとアキちゃん見つけちゃった」

コンビニならあっちにあるヨォ。と指さすと朱堂ちゃんはただ「そうなんだ」と頷いた。本当に暇つぶしにウロウロしていたらしい。今はアキちゃんに興味があるのか「撫でてもいいかな」と言うので「どうぞ」とOKする。

「アキちゃん良い子だね、お兄ちゃんとお散歩いいね」
「朱堂ちゃんにお兄ちゃんて言われるの変な感じィ」
「だってアキちゃんのお兄ちゃんだもんねー」
「朱堂ちゃん暇だんだっけ」
「うん」
「じゃあさ、あそこに公園あるけど行く?」
「行く!」

少しだけ歩くとオレがガキの時に遊んだ小さい公園がある。小さいと言っても遊具はまあまあるし、誰がつけたか知らないが出入口には自販機もある。ただ時期的な問題なのか誰もいない、少しさびれた感じがあるのが昔を知っている人間からすると寂しいような気もする。
朱堂ちゃんは公園に入ると「ブランコがある!」と喜んでブランコに腰掛けている。

「公園のブランコなんて小学生以来かな」
「朱堂ちゃーん、なんか飲ムゥ?」
「あ、私が出すよ!案内してもらったお礼と遊んでくれたお礼!!」
「いいのォ」

そこで気づいた。そうだ、アキちゃんの散歩だから金を持って来ていなかった。しかしここは誘った手前今更金がないとは言えない。オレが固まっていることに気付いた朱堂ちゃんは「隙あり!!」と小銭を自販機に投入した。

「さあ荒北くん、好きなものを選びたまえ。ベプシ?ベプシにしちゃう?」
「……ウン」
「私何にしようかなーシンプルに渋くお茶にしよう」

ピッ、ガコン。ピッ、ガコン。と缶が落ちては朱堂ちゃんが拾う。
アキちゃんは朱堂ちゃんの行動に興味津々で、何かをするたびに目線と一緒に頭が動く。

「はい、どうぞ」
「アリガト…」
「荒北くん、ブランコ。ブランコ乗って飲もう」

二つ並んでいるブランコに並んで座る。朱堂ちゃんはよほどブランコが気に入っているのかニコニコとご機嫌だ。

「今度この辺り来たら荒北くんのお家行ってもいい?」
「え」
「アキちゃんに会いに」
「ああ、アキちゃんね…よく来るの?」
「お正月とか、お盆とか…あと、たまに。そんなには来ないけど」
「アキちゃんいつも外にいるわけじゃないヨ」
「そうなんだ…じゃあお家の前に行っても見えないんだ」

それは残念。と朱堂ちゃんが笑う。
朱堂ちゃんから見れば本当の暇つぶしに知り合いの犬を見に行こうって感じなんだろう。そこの親戚の家が暇なんだろう、コンビニを探すくらいには。
オレはアキちゃんのリードを持っているのでブランコには乗るだけど、朱堂ちゃんは缶を持って少しだけ漕いでいる。

「なんか、学校以外で会うって変な感じだね」
「ソダネェ」
「制服でも体操着でもジャージでもないんだもんね」
「オレ達は寮生だから私服も見るけど、朱堂ちゃん違うもんネェ」

それから暫く雑談をする。
朱堂ちゃんは暇だし、オレはアキちゃんの散歩。時間に余裕がないわけじゃないので中身のない会話がはかどる。部活の話から先生、友達、家族、何が流行っているかとかどれも重要ではない話だ。

「あ、ちょっとゴメン」
「どしたの」
「メールみたい。えっと…そろそろ帰っておいでって」
「そっか。どっち方向?」
「あっち」

朱堂ちゃんがピッと指す方は家の方向だ。それじゃあ近いなと思って途中まで一緒に行こうと提案すると朱堂はいつもの様に頷いた。
それから缶をゴミ箱に入れて、家に帰る途中でその例の親戚の家の前で別れる。あそこオレが子供の頃からある豪邸じゃねえか。

「じゃあね荒北くん、また学校で」
「じゃあねぇー、今度来てまた暇なら連絡してヨ」



それから帰宅して「ただいまァ」と言えば、母親と妹が凄い顔をしてきて何かと思えば
「あそこのお宅の御嬢さんと知り合いなの!?」と聞かれた。
あそこで思い当たるのは朱堂ちゃんだけど、朱堂ちゃんはそこの子じゃない。

「朱堂ちゃんは部活のマネダヨ。ついでにあそこの家の子じゃネェし」
「公園で一緒に居たよね!?」
「お前どっから見てんだよ」

カツアゲしてるのかと思って様子見てたんだよ!!と妹が言うが、ウルセェ。つうか覗き見趣味ワリィな、オイ。



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