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 砂糖水は甘い



「荒北くん、それよく飲んでるけど好きなの?」
「あ?」

自販機でたまたま会った奏と荒北。
二人の関係で言えば自転車競技部途中参加組。荒北は本気の参加だが、奏はどちらかと言えば半強制的に、しかも最後の数ヵ月ほど一緒に部活をしたにすぎない。
友好的かと言えば、それほど。言葉を交わすが、お互い進んで会話をするということはない。

「ベプシ?」
「いつも飲んでるよね」
「まあ、好きだかんナァ」
「美味しい?」
「不味かったら飲まねェヨ」

ばっかじゃねェの。と言った様子で荒北は持っていたペットボトルの蓋を切る。プシュッと炭酸ガスが逃げる音が軽快にして、グッと口に入れる。
奏は荒北ののど仏が上下するのを見て、「じゃあ私も飲んでみようかな」と小さいボトルのボタンを押す。

「あれ?奏が靖友と一緒だなんて珍しいな」
「たまたまダヨ。つうか朱堂ベプシ飲んだことネェの?」
「小学生くらい?最後に飲んだのは」
「炭酸飲めるようになったのか?」
「それは飲めるようになったよ」

自分たちも飲み物を買いに来たらしい新開と福富。奏が手に持っているボトルを見て興味を持ったらしい。
荒北の持っているのはいつものベプシで、奏が持っているのも奏からしたら珍しいベプシだ。

「炭酸飲めたかったの?」
「昔ね。あの喉のチクチクーって言うのが、苦手だったけど。今は平気」
「お子ちゃまカヨ」

荒北の様にボトルの口を切って、口を付ける。すると奏は眉間にしわを寄せて何とも異様な顔をしている。

「なんだ朱堂、やっぱりお子ちゃまかァ?」
「………」
「どうした?」
「…すっごく、甘い………」
「甘い?」
「うん…荒北くん、これよく飲めるね…こんなに甘いの……」

パッケージは荒北と同じで、違うのは大きさだけ。二人は同じものを飲んでいるわりにこの反応の違いだ。
うー。と小さく唸る様に奏がボトルを眺めていると、最後の一人と言わんばかりに東堂がやってきて「朱堂も一緒か…どうした?」と不思議そうにしている。

「甘いか?」
「…うん、甘い……」
「当たり前だろう、ジュースは砂糖水の様なものだからな」
「……寿一にあげる」
「なに!?それはならん!ならんぞ朱堂!!」

福富も貰うつもりでいたのか、奏が差し出したボトルを受け取ろうとしている。しかしそれを制止したのは東堂で、当の福富と奏はきょとんとしている。

「…あ、そ、それはだな。今朝ちょっと鼻の調子がおかしかっただろう?朱堂。風邪かもしれん、そんな朱堂が口を付けたものを福にやって、風邪をうつしたらどうする」
「鼻炎だから大丈夫だと思うけど…」
「治ってないのか?」
「季節的なモノだから」
「なら問題ない」
「あるだろう!」

わかっていない二人に対し、東堂は焦る。そしてその理由を薄らわかっている荒北と新開はコソコソを話す。
「寿一鈍いな」
「東堂がさっさと言わねぇからだヨ」
と話している。

「奏、どうして寿一にやるんだ?靖友それ好きなんだから靖友にあげたらいいだろ?」
「うん…なんていうか、小さい時の、ノリっていうか。小さい時はよく二人ではんぶんこしてから」
「二人でひとつがよくあったからな」
「二人で写真もよく撮ったよね」
「あったな」
「おい、朱堂。東堂がノド乾いてっから貰ってやるってよ」
「え、ヤダ」
「なっ!?」
「だって東堂くんファンクラブあるんだもん」

その点寿一ないし。

もっともな奏の言い分には新開と荒北は東堂が哀れに思えたことが今以上になかった。



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