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 筋肉二人

※ペダステねた



後輩である泉田塔一郎くんは良い子です。
真面目で優しくて、努力家。先輩思いだし、他の部員からだって慕われている。スプリンターとして体を凄く凄く鍛えていて、私から見ても均衡がとれた筋肉なんだなってわかるくらい。筋肉に名前を付けて呼んでいるのは、ちょっとよくわからないけど。

「………」
「アンディとフランクです!」
「う、うん…」
「アンディ」
「フランク」

今私の目の前にいるのはその泉田くん。キラキラの素敵な笑顔で筋肉を紹介してくれている…わけではなく、実に不思議な人を紹介してくれている。
バーテンのお兄さんの上の服、下はレーパンという不思議な出で立ちの男性二人。フランクと名乗った人は福富くんに瓜二つで私の頭はパンク寸前になっているわけで。

「ようやく僕だけではなく、他の人とも会話ができるようになったんです!」
「そ、そう…なんだ……」
「これで朱堂さんもアンディとフランクを覚えることができますね!」
「奏、アンディだ」
「奏、フランクだ」
「………えっと、朱堂奏…です」
「知ってる。塔一郎から聞いている」
「奏はよく名前を間違えていたからな」

なにサラッと呼び捨てにしてるんだよ。という突っ込みさえできないくらいに私は困惑している。そしてこの場にいる人はどうしてこの変な状況になにも言わないの?こういう時は荒北くんあたりが騒いでるじゃん!私助けてくれるじゃんいつも!

「奏?」
「は、はい…」
「塔一郎、奏元気ない?」
「具合悪いんですか?朱堂さん…」
「いや…はい、大丈夫です。私は元気です」
「マッスルチェックする?」
「まっするちぇっく!?」

なにそれ!?という私の叫びは口から出ることなく、パクパクと魚のようにしているだけ。言えば呆気にとられたというか、驚きすぎてもう声がでないというか。とりあえず混乱している。

「大丈夫、奏。恐くない」
「そうです、アンディもフランクも優しいイイ子です」
「え、え…え」
「力を抜いて、奏」
「大丈夫、恐くない」

何が一体どうしてこうなった。
アンディ(仮)とフランク(仮)にどうしてサンドウィッチされるように前と後ろから抱きしめられているのだろうか。そして誰も何もいってくれないのか。なにいつもの風景みたいな感じで見られているのだろうか。
そして挟まれている私は鍛えている男性の分厚い胸板に困惑するほかない。

「塔一郎、奏震えてる」
「でも熱はない。風邪の初期症状かもしれない」
「それは大変だ。朱堂さん、今日は無理しないでください」
「う、ううううんんん…」

これは私が異常なの?これが普通なの?こんなに困惑するのがおかしいの?
ゆっくりと二人(仮)が離れて泉田くんに報告しているけど…変だよね、おかしいよね。そう思うの私だけなの?

「塔一郎、奏が凄く混乱してるみたい」
「筋肉と会話ができるようになって初めてだからね。朱堂さんの心の準備も必要だよ」
「え!」



「という夢を見たの」
「…そ、それは色んな意味で凄い夢ですね……」

そう、アレは夢でしたって言うオチである。本人でもないけど、泉田くんに話しているみると、やっぱり夢の中の私と同じような反応をしてドン引いている。そうだよね、たとえ夢であっても引いちゃうよね。

「またね、その二人(仮)が甘えたような声でさ…なんていうか、もう色々と反則技だよ」
「…でも」
「うん?」
「そんな風に会話が僕だけでなく朱堂さんともアンディとフランクができたらいいなと思います」
「え」





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