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 すきすきだいすき

※IH後同じ合宿所(ゲーム発売前に書いたモノです)



「朱堂さん、ヒメのストラップも持ってましたよね。それに歌まで歌えるなんて!」

目の前の総北エースクライマーだと私が勝手に思っている小野田坂道くんはキラッキラの目で私をこれでもかと見つめてくる。
今まで私はこういうタイプの男子とはあまり関わりがないし、どちらかと言えば…なんていうんだろう。とにかく、こういったキラッキラな目で見られることはなかったのでちょっと困っている。

「うんと、近所の子なんだけど、その子が学校から帰ってきてご両親が帰ってくるまで預かってて、その子が好きなんだ。それで一緒に観てるし、歌ったりして遊んでるの」
「そうなんですね!」

うん、そうなのですよ。
切っ掛けはIHでの出来事で、今回は彼が一人で「ひめひめぺったんこ」を歌っていたので、それに乗っかって一緒に歌ったこと。別に他意があったわけでもなんでもなく、ただ歌っていて、遊びに来ていたあの子を思い出して一緒に歌った。そしてら思った以上に食いつかれてしまったというわけです。

「じゃあ、ストラップも?」
「うん、その子が私にくれたんだよ。お姉ちゃんにもって」
「そんな…それ、ボク貰ってよかったんですか?」
「うん。話したらお友達が増えたって喜んでたから」

今日の合宿の予定はもうないし、あると言っても3年である私は受験勉強と普通の勉強。3年なんだからもっと勉強しなさいと言われることはないので、今日一日くらい勉強しなくてもあまり変わりはないだろうから、今日はこの小野田くんと話してみてもいいかもしれない。

「小野田なにしてんだ?箱学のマネージャー捕まえて」
「田所さん!ヒメヒメ!」
「ヒメ!ってなにやらせんだよ!!」

新開くんが話していた総北のスプリンターの。と思った矢先。いきなりノリノリでひめひめぺったんこを歌いだしていったい何が起こったんだろう。
歌ってしまったらしい本人はカッと顔を赤くして小野田くんに詰め寄っているので、うっかり反射みたいな感じらしい。そりゃあんな可愛い絵柄の付いたアニメの曲を歌ったんだから、少しは恥ずかし…ん?でも曲だけ知ってるなら恥ずかしとかないよね…?

「…ヒーメヒメ」
「「ヒメ!」」
「スキスキ」
「「スキ!」
「おお…」

私がひっかけではないけど、小野田くんは確実に歌うと思って歌ってみると案の定スプリンターの人もつられて歌った。それはもうノリノリで。総北で流行っているんだろうか。
私が歌っておいてなんだけど、ちょっと笑ってしまうと、スプリンターの人の顔がだんだんを赤くなる。

「な、なにやらせんだよ!!箱学のマネージャー!!」
「え、あ!ご、ごめんなさい!」
「……お前も、好きなのか?」
「え?」

お、お前もとは…まさかこんな強面な人がラブヒメが好きなのかと?自分も好きなんだけど私も好きなのかと聞いているの?本当に?え?
でも福富くんもあんな顔だけどリンゴ好きだし、外見と好きなものがイコールじゃないのは知ってるけど…知ってるけど、え?

「き、嫌いじゃ…ない、です」
「朱堂さんはボクにストラップくれた人なんですよ」
「ああ、騒いでたアレか」
「朱堂さん、田所さんも歌えるんですよ」
「う、うん…そうですね…」

新開くんとは違う体格のスプリンターさんに圧倒されて、声がヘロヘロになってしまっている。恐いというより、圧倒…だと思いたい。
いつも何かあると助けに来てくれるメンバーは皆お風呂タイムなのか、一向に来てくれそうな気配さえない。別にスプリンターさんが恐いわけじゃない、言っておくけど。

「言っておくけどな、オレはアニメ知らないからな」
「え」
「ボクが教えたんですよ。IHで田所さん全部歌えるようになったんですよ!」
「それは凄い…」

と言う事は、お前「も」というのは小野田くんと同じで私も好きなのか?という質問だったという事らしい。とりあえず、好きは好きだけど、小野田くんとはちょっと違いますよと経緯を話すと、スプリンターさんは「ま、そんなもんだよな」と何かを納得されてしまった。

「お、朱堂。こんなところにいたのかー、迅くんも一緒?」
「し、新開くん…」
「おう新開。お前のところのマネージャー小野田と知り合いなんだってな」
「そうなの?」
「知り合いって言うか…なんていうか…」
「ヒメ友です!」
「ひめとも…?」

いまいちよく分かっていない新開くんは多分適当に「ふーん」と流した。ちょっとドキドキとした表情でこのままその話題が過ぎ去れとスプリンターさんも思っているらしく、居心地の悪そうな顔をして明後日の方を見ている。
同じでもないけど、ちょっとだけスプリンターさんに対して苦手意識があるので、それに同情しつつ新開くんに付いてここから抜け出せないかと考える。

「朱堂、勉強教えてほしいんだけど、いい?」
「いいよ、珍しいね」
「勉強するのか新開」
「一応受験だし、テストもあるし。こう見えて朱堂は成績優秀なんだぜ」
「受験っつうことは進学か」
「明早受けようと思っててさ」
「自転車競技が強い学校か」
「そうそう」

推薦がどうの。と話している横で私と小野田くんは一緒になってちょっとだけ笑う。

「総北でヒメが流行ってるのかと思った」
「流行っているってまでは。でも今泉くんにDVD貸したんです」
「小野田くんDVD持ってるんだ。私はレンタルして一緒に観てるんだ」
「やっぱり手元に欲しいじゃないですか。それに初回限定にはCDとか」
「そんなのもあるの?」
「はい、劇中歌とか入ってますよ」
「すごいね」

録画して一緒に観たり、その子のお家の方がレンタルしたのを家に持って来てみたりしているので購入という選択はあまりなかったので驚いた。でも私も好きなものは手元に残したい性格なのでわかるかも。でもシリーズものを集める小野田くんは凄い、私にはマネできないかも。
私と小野田くんが話していると、どうやらあっちの二人は話が終わったらしい。

「朱堂、行こうぜ」
「うん」
「そうだ、オレ田所迅」
「朱堂奏です」
「え、今までお互い名前知らないで話してたの?」
「うん、実は」
「小野田と話しててな」
「へー」

じゃあね。と私と新開くんが歩き出すと後ろから小野田くんの声でヒメヒメぺったんこの歌が聞こえてくる。

「ヒーメヒメ」
「ヒメ!」
「え、朱堂?」
「スキスキ」
「「スキ!」」
「えええ、迅くんまで?」

頭にたくさんのクエスチョンマークが並んでいるであろう新開くんを見て笑って、改めて振り返って手を振る。
いい笑顔の小野田くんに対してスプリンターさんこと田所くんは恥ずかしそうに笑っていた。



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