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 もふる

「朱堂、その袋なんだ?」

部活が終わって、寮生ではない朱堂の手にはスクールバックとは違う袋がある。
今日は部活でも特別なものが必要ではなかったし、朱堂と同じクラスでそんなにもとを持っているヤツは居ない。

「これ?これはマフラーを作ろうと思って、学校に持って来てたの」
「ほう、誰かにプレゼントか?」
「まさか。自分で作って自分で使うの。この前手芸店で可愛いマフラー見つけてね、それでレシピと毛糸買ったんだ」

こんなのができる予定なんだ。と袋を開けてレシピとやらを見せてくれる。

「なんだ、プレゼントではないのか」
「なんだって、なに…東堂くんならファンの子から貰ったりしてるんじゃないの?」
「さすがに手作りはないな」
「重いもんね」
「まあな…」

暗号の様なレシピを眺めるが、全くどんなもができるのか想像ができない。朱堂は見てわかるのだろうかと疑問が起きる。
むしろ、そんなものをわざわざ時間をかけずとも買ってしまえばいいのにとも思えてくる。たぶん、朱堂はこういうのが好きなんだろうなという予想はつくが。

「あれぇ、なに朱堂ちゃん。東堂にマフラーでも作んのォ?」
「いやいや、私のだよ。人様にあげれるような手先じゃないよ」

まあ東堂と付き合ってるわけじゃねぇもんな。と覗いてくる荒北。
マフラーに興味があるというか、ただ単にオレを朱堂が話していたから入ってきた。というのが正直な所なんだろう。女ならともかく、男である荒北がマフラーに興味があるとは思えない。

「でも、今から編むの?」
「今からじゃないと寒くなってから使えないからね」
「んなもん、チャチャっと出来んじゃね?」
「なんだ荒北、お前やったことあるのか?」
「妹が前やってた。結局できなかったけどな」
「できなかったんだ…妹さん」

不器用なくせして夢見てたんだよ。とぶっきらぼうに答える。
顔が不器用なんだからその分手先が器用でなくてはバランスが悪いだろう。と、思ってみたものの、そういえば荒北の妹の顔を知らない事を思い出した。予想をして、荒北の女版を思って想像してみたものの、やはり残念な予感しかしない。見たこともない妹の悪口をいうみたいなので、何も言わない方がいいだろう。
そもそも荒北に妹がいる時点でおかしいのだが。

「どんなのにすんのォ?」
「ちょっと長めにしたいんだ」
「何の話してるんだ?」
「朱堂ちゃんがマフラー作るんだってよ」
「へー、いいな。オレのもついでに作ってくれよ朱堂」
「え、や、やだ…そんな人にあげられるようなもの作れないし…」
「でもそれ、二本目だろ」

さすがというか、なんというか。
同じクラスなだけあって、そんな情報まであるのか。
驚いて朱堂を見てみると、同じことを思ったのか荒北も驚いた顔で朱堂を見ている。

「アレはお父さんのだから…」
「なんだ、さっきと話が違うではないか」
「さっき?」
「朱堂ちゃん、人にやれるほど器用じゃないって言ってたんだよ。あれだろ、東堂にやりたくないから」
「それもある」
「なに!?」

そもそも手編みのマフラーが欲しいのなら彼女にでも作ってもらえよ。という考えなのは朱堂も荒北も同じだろう。
そもそもただの友人にそんなことを頼むこと自体間違っている。

「欲しいなら買った方が早いし見た目もいいよ」
「ならどうして朱堂は編んでるんだ?」
「趣味」
「趣味か…」
「実際趣味でなきゃ作らないよ。買った方が安いし出来はいいし。手作りが欲しいなら彼女に作ってもらうか…最終手段としては自作」

その朱堂の言葉に荒北は笑い、新開は「自作か…」と苦笑いをしている。
朱堂の友人の間では今編み物が流行っているので、朱堂自身それに乗っかっているにすぎないらしい。ついでに言うと、最初に作ったのは試作品で、今作っているのが本命だという。自分の父親をなんだと思っているのか。

「うーん、じゃあ昼休みとか朱堂のグループに加わってもいいか?」
「え、本気?」
「つうかよ、お前本当に自分で作んの?マジでェ?」
「なんか面白そうだろ?」
「隼人…女子の中に加わって、作るのか?」
「変か?」

うん。と三人で同時に頷く。
オレからしたら「そんな面倒なことしないで買えばいいのでは?」という考えであり、荒北は「女子の中に混じるほどの価値があるのか?」という疑問。朱堂は二人の意見が混じったものらしい。

「見てて面白そうだと思うんだけどなー」
「新開が編み物…」
「…悪くないけど…その光景を想像すると…ちょっと、異様…かもね」

朱堂が曖昧に笑って答えていると、その様を想像した荒北が嫌な顔をしていた。



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