「わー…あ?」
大きな大きな廊下の隅っこ。 そこには良く見知った武将が蹲っているではないか。 何かなくして探しているのだろうか。それとも具合が悪いのか。 まあ、興味本位で驚かしてやろうと思ったのがいけなかった。
「ど、どうかされたのですか?」 「…な、なんでもないよ」 「なんでもないわけないでしょう!?そんなにお泣きなられて…」 「これは…なまえが驚かすからだよ。びっくりして涙がでちゃった」
あは。と笑うが目からは涙がまだポロリポロリと零れている。
「どこか具合でも…」 「大丈夫だよー?なまえは心配性だね」 「鼻が垂れておりますよ」 「わあ、そりゃ大変」
ずびずびと鼻をすする音。
「私が驚かせてしまったせいだと言われましたね」 「そうだよ、もうなまえったらお転婆だよね」 「ではその始末、つけさせていただきますね」 「…ん?」
持ち合わせていた手ぬぐいでその涙を拭ってやって、唇に人差し指を当てる。
「私がこうしたこと、秘密ですよ?」 「…どっちを?」 「さあ、それは馬岱殿にお任せいたします」
なまえってば、罪作りだね。と隠れるように二人で笑った。
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