※現代
「あれ、楽進?」
帰りの事だ。 赤い夕日が目にしみるなんて思いながら駅に向かって歩けば良く知った声が後ろから。振り返れば案の定なまえが笑って手を振っている。
「今帰り?」 「ええ、その犬は?」 「我が家の飼い犬さんですよ。可愛いでしょ」
明るい茶色をして、黒いつぶらな瞳でその犬は尾を振っている。人懐っこいらしい。
「犬、平気?」 「大丈夫ですよ」 「じゃあ撫でてあげて。この子、撫でてもらうの好きなの」
言われた通りに頭を撫でてやると本当に嬉しそうに尾を振ってもっともっと強請ってくる。素直で可愛いと思う。
「あ、そうか」 「どうかしました?」 「楽進見てみたことあるなって思ってたんだけど、わかった」 「…はあ…?」 「楽進、この子に似てるんだ」 「え」
だって茶色い所とか、構って構ってって感じとか!
それはいささか失礼だとは言い憎いくらいに嬉しそうにしていたので、「むしろ貴女のほうがこの犬に似ていますよ」とはいえなかった。
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