※エンパ的な
「お久しぶりですね」
赤くけぶる戦場。それはかつて自分の配下にいた女。 その女はあの時のように柔く笑って目の前に対峙している。
「ああ、久しいな。いつぶりだ、お前が儂の下を去って」 「さあ、忘れてしまいました」 「それほどに昔になってしまったか。懐かしい、お前と共にあった戦場が」 「今も同じ戦場ではございませんか」 「立場は変わってしまったがな」
どちらも君主。 かつて配下だったなまえは今残る地の君主として対峙している。そうだ、どちらかが捕縛か討ち取られればこの地の戦が終わり、太平の世が訪れる。
「引く気はないのかなまえよ」 「あればこの場におりません。曹操殿こそ、その気はございませんか」 「この曹孟徳、そのような気概で天下を望んではおらぬ」
武器を握る手に力が入り、これは高揚していると自覚する。かつて恋慕にも似た感情を抱いた女が、この世の最後の敵とはなんたる運命。
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