恋する動詞111題 | ナノ
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※エンパ的な


「お久しぶりですね」

赤くけぶる戦場。それはかつて自分の配下にいた女。
その女はあの時のように柔く笑って目の前に対峙している。

「ああ、久しいな。いつぶりだ、お前が儂の下を去って」
「さあ、忘れてしまいました」
「それほどに昔になってしまったか。懐かしい、お前と共にあった戦場が」
「今も同じ戦場ではございませんか」
「立場は変わってしまったがな」

どちらも君主。
かつて配下だったなまえは今残る地の君主として対峙している。そうだ、どちらかが捕縛か討ち取られればこの地の戦が終わり、太平の世が訪れる。

「引く気はないのかなまえよ」
「あればこの場におりません。曹操殿こそ、その気はございませんか」
「この曹孟徳、そのような気概で天下を望んではおらぬ」

武器を握る手に力が入り、これは高揚していると自覚する。かつて恋慕にも似た感情を抱いた女が、この世の最後の敵とはなんたる運命。