「あんた誰や」
「私だよ、朔弥」
「朔弥…ちゃんなん?」
「そ、朔弥ちゃんやで」
牢でポカンとする卑弥呼。
卑弥呼の知る朔弥とはかけ離れた格好の今の朔弥。
これはどこかで見た男に似ているが、朔弥本人である。
「ご飯ちゃんと食べてる?」
「う、うん。食べてるで、マズいけどな」
「そっか、マズいかー」
「めちゃマズいんや、妲己ちゃんも、朔弥ちゃんもおらんから、余計マズいんや…」
「ごめんね卑弥呼、すぐ来れなくて」
妲己の元には悟空を介していく事ができたが、卑弥呼の元に行くことが出来なかった。
悟空はあれから仙人にその事ががバレたのか、卑弥呼の事を聞こうとすると逃げていた。
「なあ、なんで裏切ったん朔弥ちゃん」
「裏切ったんじゃないよ、これがあるべき姿なんだよ」
「…なあ、朔弥ちゃん。これからうちらどうなるん?殺されてしまうん?」
「ううん、ある程度の処罰はあるけど、殺されないよ。私がそのために卑弥呼捕縛したんだもの」
ただ卑弥呼の気がかりである妲己はそれが対応しない。
詳しい処遇は仙人だけが知っている。
「卑弥呼、あのね」
「なんや?」
「この世界はあと3日で元通りになるんだ。それで皆元の世界に戻っちゃう」
「戻るって…もう妲己ちゃんに会えんいうこと?」
朔弥ちゃんにも?と卑弥呼は不安げに朔弥を見上げた。
黙って頷く朔弥に卑弥呼は嫌だと大声を上げた。
朔弥は卑弥呼を授業というかたちのだいたいでしかないイメージを持って見ていた。
歴史なんてそんなものなのだろう。
朔弥の持つ卑弥呼のイメージは呆気なく壊されたのだが。
ただ、何もない朔弥を「もう会えないのは嫌だ」という卑弥呼の気持ちが嬉しかった。
「なら、なら…朔弥ちゃんは、あの、政宗とか慶次とかいう奴らと一緒に帰っていくん?」
私の帰るのは
戦国、時代?
卑弥呼の言葉に朔弥は頭が一瞬真っ白になってしまった。
私が帰るべきは戦国?
私がいた世界は、時代は戦国じゃない。
なら、私はどうなる?
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