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何故こんな事になったのか。
となりの男は特に気にするでもなく、上座に座る男と話している。
上座に座るのは秀吉、隣には正室のねねも控えている。


「にしても、三成を投げ飛ばすとは肝が座っておる!」

「笑い事じゃないよ、お前様!三成も朔弥も怪我がなかったからいいものの、怪我してたら大事だよ。まったく!」

「だからって当事者じゃなくて俺に説教するなよな、ねね」

「目を回してた三成にも、具合の悪い朔弥にも説教できやしないじゃないの。三成は後として、朔弥のは孫市の責任でもあるからね!」

「おいおい、マジかよ…」


どうやら先日の一件の話の様だ。
あの席の事件から数日、今は城の大広間にいる。
翌日には幸村に謝られ、兼続には豪快に笑われ、左近にいたっては嫌わないでやってくださいとお願いまでされた。
孫市と別行動をすると三成を嫌っている男だろうか、いやに親しげに近寄り「よくやった、お前は見込みがあるぞ。どうだ、配下にこないか」と熱心に誘われた。
丁重に断ったが、事ある事に話かけられるようになった。


「で、朔弥をワシに預けるというのは本気か孫市」


秀吉の言葉に微かに肩を揺らした朔弥をねねは見逃さなかった。
朔弥は相変わらず、少し俯き加減に床を一点に見つめている。


「ああ、つっても、朔弥をやるわけじゃねぇぞ?」

「なんじゃ、良い狙撃手が手にはいるかとワクワクしてたんじゃがなー」

「俺は少し思い当たる事があってよ。こいつと一緒じゃ思い通りに動けないんでな。俺が帰るまで頼むぜ」

「あたしはいいよ?こんな可愛い子が来るんだもの!…でもさ、孫市。朔弥はそのつもりがあるのかい?」

「…私、ですか?」


そうさ、朔弥だよ。
ねねが優しく朔弥を見ると、それに合わせるように二人も朔弥を見た。


「…私は、決定に従います。実力が伴わない私はどこにいても足手まといだと思いますので」

「ここにいて、いいんじゃな?」

「それが決定であれば」


少し自分に付いて来たいと朔弥が申し出るのではないかと期待した孫市は肩を落とし、ねねはよし!それなら着物を用意しなくちゃね、そんな男みたいな格好なんてさせたままじゃいさせないよ!と意気込んだ。
それを見た秀吉は愉快そうに笑いながら見ていた。

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