「な…っや、やめたんですか?」
あの格好。
左近の落ち込みようが半端ない。
横にいた趙雲は何事かと左近を見た。
左近の目の前にいるのは雑賀の持つ銃を手にしている小柄な男。
何処かでみた顔だとよく見てみれば、朔弥ではないか。
「こっちの方が動きやすいので」
「朔弥殿は男装がご趣味ですか?」
「いいえ。戦に出るときなどこの方が安全な場合があるので」
「そうですか…。孫市殿から伺っています、朔弥殿の腕前」
「孫市は過大評価なんです。ですがその評価に負けぬよう努力します」
趙雲と朔弥が話すなか、左近のみが取り残されている。
朔弥はたいして体に凹凸があり、女らしい魅力的な体ではない。
しかし、それなりに女の体をしているし、色気だってあった。
あの着物は足の付け根あたりまで時々見えたり、胸の影も、ヘソだって…。
実は左近の癒やしだったのだ。
それがどうだろう、今左近の目の前で趙雲と話す朔弥は鉄壁の防御に近いではないか。
「も、もう着ないんですか…?」
「…え?」
「あの、白い着物…」
「ああ、妲己からもらった着物ですか?」
「私はあの着物は目のやり場に困ってしまって…」
ふにゃりと笑う趙雲。
それを聞いた左近は「あんたはホントに男か!!」と突っ込みたい衝動にかられた。
悶々としていると何処かから女カが朔弥の後ろから現れ、朔弥の腰に手を回した。
「何かご用意でしょうか女カ殿」
「なんだ朔弥、お前そういう趣味か。よし、男役は朔弥にまかせてやろう」
「話がみえないので要件のみ教えていただけますか?」
「なんじゃ、吊れん奴だ。まあいい、後でまた私達の部屋においで。話がある」
ついでに左近という男も連れてこい。と目の前にいる左近をまるで無視して姿を消した。
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