「よ!元気してる?」
片手を挙げて笑う朔弥。
それを見て慶次と政宗はポカンとした。
「ありゃ?元気ないね。具合悪い?」
「おま…肩、肩はどうした!?儂の配下に撃たれた肩じゃ!!」
「あー、うん。治った」
「ば、馬鹿も休み休み言え!」
「怪我、酷かったんだろ?そんな簡単にゃ治らんだろ…」
肩をぐるぐる回してみせるが、信用しない二人。
隠す必要もないので二人に仙人の事を話すと、疑いながらもわかったようだ。
「そ、そうか。それはよかっではないか」
「うん、よかったよ。これでまた雑賀に戻れるし」
「それでご機嫌なのかい?」
「えっへへー。それだけじゃあ、ないんだなぁー」
牢に入る二人に朔弥はニコニコとしてその事を伝えた。
「なっ、釈放じゃと!?」
「そりゃまた…」
「ちょっと、もう少し喜んでよ。私すんごく頑張って頑張ってここまでもってきたんだから。まあ、ある程度の罰はあるけど」
あと配下の皆さんも無事だよ。と朔弥は笑った。
朔弥の表情は戦国の時とも、妲己の元にいた時のものとは違う。
心から嬉しそうに笑っている。
「罰の通達は左近殿に任せたから、それまで待っててね」
「何故左近なんじゃ」
「あの軍師と話すの嫌なんだよね、何かと嫌味でさ。腹立ったから左近殿に押し付けちゃった」
「確か…軍師してたもんな」
「だってさー、こーんなナマズみたいな髭生やした軍師殿は嫌味しか言わないし、顔がいい軍師殿は処遇の意味が分かってないっていわれるし、口の悪い軍師殿は馬鹿め!しか言わないし」
話すの嫌になっちゃた。とあっけらかんと言ってみせた。
牢に繋がれる身からしたら、その軍師の言うことは正しい。
もう二人はただ口をポカンと開けて呆ける他ない。
朔弥は朔弥で「あそこにいたら私胃に穴あいちゃうよ」と溜め息までついて見せた。
「まったくさー、私の捕縛者の処遇は私に一任するっていう約束であんな無理したんだから」
「ば、馬鹿め!その為に…あんな無茶をしたというのか!」
「馬鹿って…ちょっと、」
「そんな事されぬとも、儂は…」
「おい政宗、んな顔すんなよ。朔弥が心配しちまうよ」
政宗の肩にポンと手を置いて慶次は朔弥に「ありがとな」と礼を言った。
それに朔弥も笑顔で応え、政宗は小さく「すまぬ」と呟いた。
「まー、政宗はともかく慶次にはちゃんと戻ってもらわないと、ね」
「なんだ、どういう意味だ」
「慶次は私と約束があるんだもの。松風に乗せてもらわなくっちゃ」
ね。と朔弥はなんとも楽しそうに笑った。
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