「「あ」」
鉢合わせたのは島左近。
悟空は朔弥を妲己に引き合わせ、帰る途中で姿を消した。
無責任な!とは思わないが、一言言ってから消えてくれと思っていた。
暫く動けなかった体が辛く、壁に寄りかかりながら歩いていたら目があってしまった。
「何してるんですか、そんな体で!」
「あー…うー…さ、散歩?」
「なんで疑問系なんですか。しかも一人でなに考えるんです」
「いや、そんな事言ったら…駄目だと言われてしまうではありませんか」
そうでしょう?と上目遣いに伺えば、左近は溜め息をついた。
確かに止められるであろうが、譲歩もするはずである。
距離が短いか、外に出して腰掛ける程度。
勿論付き添いはいるだろうが。
「こっちに散歩しても面白いものもないでしょう」
「ええ、陰気臭い雰囲気しかしなかったので早々に戻りました。なにがあるんです?」
「ただの倉庫ですよ」
嘘だ。二人は同時に心で呟いた。
朔弥はその先に妲己がいるのだ、会ってきたのだから間違いない。
左近は妲己がその先にいると教えれば行くと言い出すだろう朔弥を止めるためだ。
「辛いんでしょう?体」
「……は、い」
「ちょうどよかった、仙界のお二人がお呼びですよ」
何がちょうどいいのかわからず、朔弥がキョトンとしていると左近はあの時の様に朔弥を抱き上げた。
これには朔弥も焦った。
あの時は怪我て頭が朦朧としていたが、今回は違う。
抵抗しようにも、今度は体の動きを抑えられてしまった。
「さ、左近殿。おろ、おろして下さい」
「いえいえ、お礼には及びませんよ」
「…人の話聞いてます?」
「いやー、役得役得」
左近は朔弥を無視して二人の仙人の元に向かった。
前 /
次