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あーあ、負けちゃった。
最後の最後まで朔弥ちゃんに会えなかった。
馬鹿ね、朔弥ちゃんは本当に馬鹿。
私があげた武器も術も、使わなきゃいいのに。

そうすれば、私、ちゃんと朔弥ちゃんの事嫌いになれたのに。
こんなに心配しなかったのに。


「で、私と遠呂智様をどうするの?太公望さん」

「お前達は処罰せねばならん」

「あら、またあのカビ臭い仙界に行かなきゃなの?芸がないわね」


この場で殺されないのは喜ぶべきか。
それは妲己には分からない。
別に生きたいという漠然とした意識があるわけではないから。
遠呂智はただ自分を倒す強者と出会いたかっただけ。
捕縛されるのをなんとも客観的に感じる妲己。


「朔弥ちゃん、いないのね」

「朔弥なら今は本陣で眠っておる。感謝するぞ妲己、あの娘気に入った」

「ちょ、女カさん?」

「なに、妲己がおらずとも私が可愛がってやろう」

「厭らしい目で朔弥ちゃんの事みないでよ!」

「ふん、時がくれば見せてやろうか。その時まで楽しみに待っているといい」


ちょっと待ちなさいよ!!と騒ぐ妲己。
捕縛の為に妲己を抑える兵が酷く困ったのは言うまでもないが、それでも妲己は大人しく捕まったに近い。
本気で暴れたらそれでは済まないからだ、


「それで私達、これからどうされちゃうわけ?」

「朔弥が捕縛した者達は朔弥が行く末も決めるらしい」

「…そう、だから朔弥ちゃん無理したんだ」

「妲己、お前達は仙界の者が決めるゆえ、暫くは結界の張る牢の暮らしじゃな」

「笑顔で言わないでくれる?伏犠さん」


溜め息をつきながらされるがままに歩く妲己。
やっと朔弥の意図がわかった気がしたのだ。
何故無理をしてでも奇襲を仕掛けたのか。
ただ助けたかったのだ、仲間を。
朔弥達が勝てば朔弥の命により助けられ、負けたとしても無事で終わる。
もし負傷しなければ自分の所にもきてくれただろうか。
朔弥は優しいから、酷い言葉で私を傷付けて自分を恨むように仕向けたかもしれない。


「馬鹿なのは、私かもね…。こんな妄想しちゃって」


馬鹿みたい。
小さく妲己の唇からこぼれた。

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