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「おいオッサン、朔弥返してもらえねぇか?」

「残念ながらこちらの将を易々と差し上げられませんねぇ」


左近に抱かれなが虚ろな目で悟空を見る朔弥。
そうとう辛いのか涙目で息が浅い。

これは相当ヤバいのかもしれない。

妲己にはだいたいの事は聞かされていた。
しかし負傷が想像以上に悪すぎる。
手厚い介抱を受けたのだろう、止血はされている。


「…朔弥を渡せ」

「出来ませんね。しかし奇襲といえど大胆ですね、こんな所に一人でくるなんて」

「俺様器用だからこんなこと楽勝なんだよ。だいたい将とか言いながら朔弥一人に無理させた挙げ句そんなにしちまって」

「………」

「人間てのはわかんねぇな。仲間なんて優しい顔してやってることはえげつねえ」


その時、朔弥の唇が動いた。
もう声が出ないところまでいってしまったのか。
それが命の消費なのか、怪我のせいなのかは悟空には判断できない。


「……悟空、」

「おー、今妲己ん所連れてってやるよ朔弥。そしたら楽んなるぜぇ。お前を痛めつけた奴に仕返ししてやるの手伝ってやるよ」

「私、は…戻らない…悟、空は、引いて。分身、消して、逃げ、ろ」


肩が痛んだのか呻き声を上げる朔弥。
朔弥を抱く大柄の男が焦っている。
もしかしたら外に怪我があって傷口の様子がよろしくないのか。


「清盛、も…妲己も、遠呂智も。負け…る。今のうちに、逃げるか、投降、した方がい、い」

「朔弥さん…」

「清盛に恩があるの、知って、る。でも、ここで…死んだら、」

「そしたらお前も死ぬかもしれねえんだぞ。しかもなんだここの張りは、お前が負傷してんのに護衛がそのオッサン一人じゃねえか!!」

「私は、いいんだよ、もう…。」

そういうと朔弥はそのまま意識を失った。
なんだ、朔弥は。

朔弥を抱く男は片手に大型の刀を構えるが、この状況ではどう転んでもあちらに分はない。


「もう少し自分の為に我が儘いえよ馬鹿野郎!!何が自分はもういいだ…勝手に死のうとか思ってんじゃねえよ…」

「で、そちらさん。やり合うには朔弥さんに負担が大きいですが、どうします?」

「…オッサン、朔弥は、今幸せか?」

「…さあ、どうですかね。戻ってから自分を追い詰めてばかりでしたからね」


そうか。と悟空は小さく呟いた。

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