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息をすると肩が焼けるように痛い。
その事に驚いて息を止めてみるが、その熱さが引く様子はない。
寧ろ、鋭い痛みが太鼓を叩くように徐々に増す気さえしてきた。
あまりの痛みに息を止めていた分深く息をしようとするが、浅くしか出来ない。

そうだ、政宗を捕縛しようとしていて撃たれたのだ。
朔弥は思い出した。

こんなところで寝てはいられない。
自分が助けたいと思う人間は全て捕縛した。
これで彼らの命の保証は出来た。
次は、自分の始末をしなければならない。

どうせ悟空は上手く逃げるだろうから心配はない。
清盛はどうでもいいと言ったら申し訳ないが、そうだ。
遠呂智は面識がない。むしろ彼はいてはならない。
彼の復活を願ったのは自分の意志ではない。
妲己にはこうなった始末を付けにいかねばならない。

起きようにも、体に力が入らない。
ただ浅い息のみが漏れるだけだ。


「本陣近くに敵軍!奇襲です!!」


急に慌ただしくなる本陣。
行かなければ。
ただその思いで朔弥は痛む肩を庇いながらやっとの思いで起き上がる。
あまりの痛みに気が遠のきかけたが、気合いでつなぎ止めた。

周りを見、己の武器を確認するとそれに手を伸ばした。
こんな何気ない行動まで歯を食いしばりながらしなければ何も出来ない。
言うことを聞かない体を引きずりなから、朔弥はおぼつかない足でゆっくり張りを出た。


「ちょ…何してるんですか!」

「奇襲…行か…なきゃ」

「その怪我じゃ無理でしょうが!」

「…っでも」

「いい加減にしろ!!」


怒鳴る左近に朔弥はただ唇を噛んだ。
彼は優しい。
自分の事を思って叱ってくれているのは十分わかっている。


「そんなに頑張らなくていいんですよ。此処は本陣でもう兵力の差は歴然でしょ?奇襲で落ちる程、この左近の策は無謀じゃありません」

「……左近、殿」


それじゃ張りに戻りましょうね。と意図も簡単に朔弥を抱き上げた左近。
勿論肩の怪我に負担をかけないように。
左近が一歩踏み出そうとしたその瞬間、異変が起きた。
目の前にいつか見た猿を模した妖魔の姿。


「…悟、空」

「よう、朔弥」


悟空と呼ばれた妖魔はニヤリと笑った。

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