「なんで邪魔するのよ、朔弥ちゃん…」
今度は政宗までやられてしまった。
これでは遠呂智軍の敗北が近い。
不本意ながら共に陣を張る清盛の軍勢に頼らなければならない。
朔弥がいたからことある程度の交友関係があったが、今はその朔弥がいない。
清盛はもう遠呂智復活という目的を果たし、次に連合を叩き、最後に妲己を亡き者にする寸法なのがバレバレだ。
「慶次さんや政宗さんだけならまだしも卑弥呼まで…」
「見事に人間だけを捕縛しておるな、朔弥の奴は」
「清盛さん…どういう意味よ」
「人間の考える事だと言っているのだ。大方朔弥はあちらの軍師にそいつらを捕まえれば朔弥の命を助けてやるとでもふっかけたのだろう」
「朔弥ちゃんはそんな子じゃないわ!!」
「敵方の将に感情移入か」
考えを巡らす妲己に清盛が嫌がらせの如く妲己を追い詰めた。
確かに敵方となってしまった朔弥を庇う要因はない。
元々自分が朔弥をいいように使っていたのだ。
あれは朔弥の本性ではないに近い。
ただ、妲己自身が朔弥を気に入っていたのだ。
最初は玩具程度、もしあちらにとられても勝手に自己嫌悪で死んでもらっても構わなかった。
「妲己、お前が動かないならば儂が動くまでだ」
「…何をする気?」
「簡単な事だ、敵本陣に奇襲をかける」
奇襲の準備をするためだろう、清盛は姿を消した。
確かにこの状況を打破するにはそれが適策。
しかし妲己にはそれ相応の部下がいない。
奇襲に長けた朔弥は勿論の事、手練れという者は朔弥によって捕縛され、そこそこの者しかいない。
「なによ…私だって、こんな誤算がなければ…」
妲己はただ爪を噛むしかできない事に腹を立てた。
しかしそれだけで終わる訳にはいかない。
清盛が奇襲をするのであれば、此方は本陣の防衛強化をしなければならい。
妲己は一度気を落ち着かせ、防衛の策を巡らせた。
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