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「よう、元気だったか朔弥」

「おかげさまで。そっちも元気そうだね、慶次」


豪快に笑う慶次に臆することなく向かう朔弥。
慶次は朔弥が妲己の元にいたときからそうだ。
敵方の将に知り合いがいても態度を変えることはしなかった。


「まさか本当に朔弥が孫市んとこの朔弥だったとはねえ」

「本当だよ、まったく。でも、だからやらなきゃいけないこともあるんだよ」


慶次が武器を握る。
そして朔弥も武器を握り、構える。
やはり慶次も将だ、周りには配下がいる。しかし慶次は手を出すなと制止をかけている。


「すまねえな、あの時俺が助けにいけば朔弥はそんな思い、しなくてすんだのにな…」

「まあ、こうなる運命と諦めた方が楽なのかわからないけどね」

「お前はまたそうやって逃げんのかい?」

「逃げなきゃ自分が壊れるから仕方ないよ」


諦めた様に笑う朔弥。
慶次は朔弥が捕縛された後、政宗と共に妲己に真実を聞かせろと迫り、答えを聞いた。
そして、妲己の元を離れてもなお仙人の力を使う危険性。


「悪い事は言わねえ、こっちに大人しく投降しろ、朔弥」

「それはこっちのセリフ。大人しく捕縛されてくれない?」

「お前、そのまま力使ったら危ないんだぜ?」

「この戦が終わるまでは保たせるさ」


つまりはその先はどうでもいいのだ。
妲己の庇護がない朔弥はただの人。
まして仙人しか扱えぬ武器や術の危険性は朔弥にじわりじわりと蝕んでいるのも朔弥自身身にしみている。


「…実は妲己から朔弥の捕縛命令出てんだよ」

「じゃあ話は簡単じゃない。私が勝って慶次が捕まるか、慶次が勝か」

「…その心意気、嫌いじゃないねえ!」


力と力がぶつかった。
鋭い矛先が羽衣をかすめ、羽衣は矛の主の自由を奪うべくうねる。
時に両者の皮膚を貫き、鮮血が飛ぼうが互いに引くことはしない。
体格の差が激しい両者。
小柄で小回りの効く朔弥とはいえ、仙人の庇護が無ければ恐れるに足らない。
しかも己の得意とする銃での援護ではない。
接近戦は朔弥が最も苦手としていた部類だ。


「悪いこと言わねえから、投降しろ」

「……断る」

「息が上がってるじゃねえか、怪我も酷い」

「私を、捕縛したかっ…たら、殺すつもり…か、ちゃんと急所…」


ついに朔弥が膝を折り、地に手をついた。
息も荒く、顔を伏せてしまった。
これ以上は無理だと感じとった慶次は朔弥の捕縛の為に近付き、介抱しようとした瞬間の事だった。
朔弥は一瞬のうちに術を用いて慶次の後ろに回り込み、慶次の自由を奪った。


「なっ…」

「駄目だよ慶次、相手がまた意識のあるうちは油断しちゃあ」

「こりゃあ…参ったねえ」


にっこりと余裕綽々で笑う朔弥。
確かに多少疲れてはいるだろうが、今までの様子からはそれが感じ取れる素振りはない。
慶次のつけた怪我からは鮮血が流れ続けているが、朔弥はそれを庇おうとはしなかった。


「さあ、慶次。私と一緒に来てもらおう」

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