「いいんだよ、これで」
「よかねえよ!」
「何がいいというのだ!!」
遠呂智が復活した。
そこで連合は一気にたたみかける決意をし、陣を張った。
朔弥としては前もってこの作戦を知っていたし、左近と幸村は口外しなかった。
それを知らなかった朔弥を知る者は激怒したが、当の朔弥はそれでいいのだと反論の言葉は一切口にしなかった。
「ならば朔弥、わらわも朔弥と一緒に行くのじゃ。そうじゃ、孫も一緒に行くのじゃ」
「ガラシャ、ガラシャはもう軍議で誰と何処に攻めるか決まってるでしょう。勝手に動くな」
「んなもん無視してやる」
「それじゃ勝てる戦も勝てないよ、孫市」
「それでは義に反する!」
「気持ちだけで先走るのは兼続殿らしくありません。それこそ義に反します」
軍の配置を知らせた孫市、ガラシャ、兼続が朔弥に一人で行かせまいと必死に説得するが、朔弥は頑として一人で行くのをやめようとしない。
その場に幸村もいるが、一言も朔弥に言葉をかけようとはしない。出来ない。
彼は既に朔弥が一人で行く覚悟に似たものを感じ取っていたのかもしれない。
「それに、交換条件で諸葛亮殿に約束を取り付けました」
「約束…ですか?」
「あの後、諸葛亮殿に私が捕縛した者の処遇は私に任せて貰うよう頼みました」
「…どういう意味だ?」
「もし私が死んだとしても、捕縛者は左近殿に処遇を任せます」
朔弥に与えられた武器は雑賀の銃ではなく羽衣。
それは朔弥が自身が選んだ選択。
もしかしたら、朔弥はあちらを裏切った者として戦場に立つ覚悟なのかもしれない。
そんな事をしたらいい標的だ。
「この戦で全て決まります、なら私はこの戦でやらねばならないことがあります」
「…慶次は強いぞ」
「そう、ですね」
「朔弥、お前まさか…」
「行こう、時間だよ」
止める声を聞かずに朔弥は自分の配置に行くべく足を速めた。
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