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何故牢ではないのか。
そう聞いたことがある。
その答えは何とも呆れるものであった。
朔弥は私達の仲間だから、朔弥が悪いことをしたわけではない。全部妲己が悪い、朔弥が責任を感じることはない。
だそうだ。


「私がやったことには変わりないのに…」


だから部屋の出入りも自由。
ただ敷地外や軍師の使用する部屋など、制限は設けられた。
それ以外にも、朔弥が行く先々で見張られた。
主に三國の者だ。
朔弥と親しかった仲にあった者ではどうしても寛大に見る。
それではいけない、彼女はいつ反旗を翻さないと限らない。と古の大軍師殿が進言したそうだ。
朔弥にしてみたら牢でないのが不思議で、それで済むのかと驚いたほどだ。
どうやら、ねねや秀吉、孫市達も朔弥の援護に回ったが、これが最大の譲歩だったそうだ。


「おや、朔弥殿。散歩ですか?」

「…ええ、少し城内を見て回ろうかと思いまして」

「ご一緒しても、よろしいでしょうか」


声をかけてきたのは蜀の武将の趙雲と以前幸村に紹介された人物。とても人当ありがよく、皆に好かれているのは見てとれた。
しかし三國の武将、朔弥の動きには目を光らせている。

朔弥が何も答えずにいると趙雲はそれを応と見なし、笑顔で「ご案内いたしましょう」と朔弥の横に並んだ。


「さて、どちらをご案内しましょうか」

「………」

「食堂の方はもうご存知ですし…庭ももうご存知ですよね、前にいらっしゃるのを見ましたから」

「………」

「それでは鍛錬場なんていかがでしょうか、今の時間帯ならば人も多く、お知り合いもいらっしゃる」


よく喋る。
これを壁一枚向こうで聞いていたら趙雲が独り言を喋っているようにとれてしまう。
朔弥が何も喋らず、ただ黙っていると趙雲はまたそれを応ととった。


「それではご案内いたしますね」

「………」

「朔弥殿は孫市殿と同様の武器を扱うそうですね、大変腕が良いと聞きました」

「そう…ですか」


朔弥は仕方なく趙雲の後ろに続いた。

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