「朔弥、久しぶりだね」
「おねね…さま」
「おお、本当に朔弥なのじゃ!」
「ガラ…シャ」
朔弥が気づくと目の前に見慣れない天井。
すると聞き慣れた女性の声が聞こえた。
見れば以前世話になったねね、自分にも懐いていたガラシャ。
とても心配そうに朔弥をのぞき込んでいる。
「もう、あの子達は力加減てものを知らないのかねえ」
「痛くないか?そこらじゅうアザだらけなのじゃ…」
お説教しないとかねえ。と呟くねね。
ガラシャは何も答えない朔弥を心配そうに見ている。
ねねは朔弥の目が覚めた事を知らせる為に退室した。
「そうじゃ、喉は渇かぬか?」
「………」
「孫に聞いたのじゃ、いっぱい戦って朔弥は喉が渇いているとな」
朔弥は拒否の意を頭を横に振った。
痛む身体を無理矢理動かし、ガラシャに背を向けて丸まった。
それを見たガラシャはオロオロとした。
もしかしたら具合が思わしくないのかもしれない。
「やっぱりどこか痛むのか?」
「……ううん」
「ではどうしたのじゃ?おお、疲れて眠いのじゃな」
「………」
「気付かないですまぬ、朔弥。わらわは出て行くのじゃ。水はここにあるから飲むといいぞ」
おやすみなのじゃ。とガラシャは退室していった。
すると出入り口付近で誰かに会ったのだろう、話し声が聞こえてきた。
「嬢ちゃんどうした、朔弥んとこじゃないのか」
「朔弥は眠いそうなのじゃ」
「そうですか…やはり押さえが強かったのでそれが身体に障ったのでしょうか…」
「それなら仕方ないですね、出直しますか」
やけに良く聞こえる。
もしかしたらガラシャは戸を閉め忘れたのかもしれない。
だからといって閉めてくれと声を掛けるのも嫌だし、自分から動く気も起きない。
朔弥は溜め息を漏らした。
「顔なんて、合わせられるわけ…ない」
眠い訳ではないが、ゴチャゴチャ考えるのが嫌で目をつぶった。
どうせならこのまま目が覚めなければいいのにと思いながら。
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