「ふむ、なんじゃ意外と可愛らしい顔をしておるではないか」
「厭らしい目でみるな」
叫び狂う朔弥を黙らせたのは伏犠だった。
仙人は瞬間的に移動するのが得意なのか、呪布を撃ち抜いてすぐ現れた。
朔弥に手刀でいとも簡単眠らせた。
すぐに伏犠は怪しげな呪文を唱え、何かと尋ねると「起きないよう呪いをかけた」のだそうだ。
「しっかし、こう、寝顔は朔弥そのものだもんな…」
「お?なんじゃおぬし、この娘とそういう関係か?」
「そ、そうなのですか?孫市殿…」
「違うぞ、違うからな。朔弥とは長いこと一緒に仕事してたからだ」
野宿すれば見張り役で交互に休憩とるだろ。となんとも複雑そうに答える孫市。
それを見た伏犠は「そうかそうか」とニヤつくし、幸村は疑いの眼差し。
「それではワシは娘を連れて本陣に戻る。あとは頼んだ」
「あ、ああ」
「朔弥殿をよろしくお願いします、伏犠殿」
「うむ、しかしこの娘は抱き心地がいいのう。もう少し胸があったらいいがのう」
伏犠に横抱きにされた朔弥を心配したが、すぐに消えてしまった為に文句がいえない。
伏犠が消えた一点を見つめ、二人は意気投合して敵を討って早く終わらせる誓いを立てた。
「妲己に目を付けられた不憫な娘か」
「あまりそう言うでない女カ。見れば愛らしい顔で眠っておるではないか」
伏犠が本陣に戻ると、それを見つけた女カが寄ってきた。
伏犠に抱かれ、意識のない朔弥を見て女カは笑った。
確かに愛らしい顔で眠っている。
「ああ、戻られたんですか伏犠さん」
「うむ、どうじゃ左近。愛らしい顔をしておろう?」
「そんな自分の娘じゃないんですから…」
「なんじゃ、せっかく見せてやろうというに」
「この一件が終わったらこの娘手元に置きたいものだな」
「女カ?」
「私はこの娘、気に入った」
伏犠の腕に抱かれる朔弥の頬をフニフニとつつく女カ。
孫市の元にいた朔弥を知る訳でもない女カに朔弥の何処が気に入ったのかと問えば、「この寝顔と、あの時会った時の態度か」と朔弥の頬を撫でた。
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