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「朔弥ちゃん!!」


妲己が叫んだ気がした。


これは誘き出された、と言うべき局面。
真田幸村の安い挑発に乗ってしまった己の軽率な行動を悔いた。
最初の配置では慶次が近かったはず、いざとなれば彼に助けを求めるか、そこまで逃げればいい。
だいたい彼方も幸い一人。


「よくもここまで誘き出してくれたな真田幸村」

「朔弥殿は私に面の恨みがございましょう。そちらも味方はなし、思う存分勝負したしましょう」

「…後悔しても遅いから覚悟しな!」


速い!!
それが幸村の朔弥に対する印象だ。
舞うように羽衣を繰り出し、幸村の視界を奪うように広がる。
羽衣で槍を絡め取るようにしたかと思えば強い力でそれを引いた。


「さすがと言うべきか、簡単に倒されてくれないか」

「簡単に倒れれば武士の名折れでございます」

「さっさと倒れろ、お前、邪魔なんだよ」




「嘘だろ、あんな速いとか聞いてねぇぞ…あつは忍か?」


左近の作戦は極簡単な物だった。
幸村を餌に誘き出し、幸村の相手に夢中になっている時に孫市が呪布を狙う。
この戦自体が朔弥の作戦ではないので人員は割けないの欠点ではあったが、今のところ順調だ。
幸村だけで時間を食い過ぎれば朔弥は焦る、そこで周りに気を散らせなくなるから、手の空いた者は朔弥の周りを固めるというものだ。
ただ、朔弥も馬鹿ではない。
ヤバくなったらトンズラするだろう。


「お前、時間稼ぎでもしてるのか」

「なに?」

「守ばかりで攻撃してこないだ、ろ!」


ぐいっと羽衣で幸村を引き寄せるた朔弥は、顔を近付け言葉を発すると、勢い良く幸村の腹部を蹴り飛ばした。


「目的はなんだ。私一人前線から引き離しても何もなるまい」

「勘だけはいいようですね」

「…そんなに私を挑発して楽しいか?」


左近に朔弥を出来るだけ挑発して周りを見せないようにする。
それが幸村に課せられた課題。
朔弥は素直に幸村の挑発に乗ってくれている。
そこで孫市が隙をみて呪布を撃ち抜いて貰うだけ。
ここからは体力勝負だ。


「ええ。無力な女性を痛めつけるのはきがひけますが、朔弥殿と名乗る偽者を退治できますからね」

「…また朔弥、か。いいだろう、望み通り殺してやる…!」

その時、朔弥の動きが止まった瞬間を孫市は見逃さなかった。
パンッ。乾いた音がこだました。
流石孫市、朔弥の身体にはかすりもせずに見事呪布を撃ち落とした。
動きの止まった朔弥。


「…あっ」

「………朔弥、殿?」

「…あ、ああああああああああああ!!!!!」


急に頭をおさえ、叫びを上げる朔弥に幸村と孫市は狼狽えた。
側によって介抱してやりたいが、危険がないともいいきれない。
ただ見ることしかできない二人を余所に朔弥は頭を抱え込み、膝をついて叫び続けている。


「…き、妲己、妲己、妲己ぃ!!!」


頭が痛いよぉ!!と泣き叫ぶしかできない朔弥はそこで意識を失った。

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