「あの女は…朔弥殿なのでしょうか」
「名前だけが同じ…とは思いにくいですがね…」
「しかし、朔弥はあのような荒い言葉使いはしないぞ」
兼続の救出の際、孫悟空と名乗る妖魔と共にいた女。
名前だけが、あの雑賀の娘と同じだと思っていた。
しかし幸村が女の面を割り、そかにあったのは朔弥と瓜二つ。
違うといえば、幸村や左近を見た時の表情だ。
見慣れた穏やかな朔弥の表情ではなく、怒りで幸村を睨みつけていた。
「まだ朔弥と決まったわけではないさ」
「…そうですよ、もしかしたら孫市さんと一緒に行動してるかもしれませんし」
「……そう、ですね」
もし、あの女が朔弥であったなら何故妲己の側に居るのか。
自分達を見ての反応はまるで初対面。
もし朔弥本人であれば、そこまでする必要がどこにあるのか。
あちらに身を寄せる伊達政宗や前田慶次は堂々としたものだ。
「しかし、睨まれてましたね」
「次会ったらただては済まさんと言われたそうだな、幸村」
「ええ、あの面が相当気に入っていたのか…怒らせてしまったようです」
「あの顔はそうとう頭にきてますね。しかし怒った顔も綺麗でしたよ、あの女」
にやつきながら自分の顎をさする左近。
その顔があまりに嫌らしくて幸村はどん引き、兼続は不義だ!と小一時間説教を行った。
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