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「おい、朔弥。ちょっと面貸せ」

「なにその不良が絡むような言い方」


悟空が朔弥に声をかけたと思ったらなんとも無粋な誘い文句。
何かと思い、話を聞けば戦を有利に働かせる為に人質をとりに行くのだと言う。
少し朔弥は嫌な顔をしたが、清盛には妲己救出の借りがある。
その事を思えば断る事が出来ない。




「これが人質?」

「人をコレ呼ばわりか、それに人に向かい指差すなど不義!」

「元気なこって」

「…なあ、コイツ運ぶのかわらねぇ?」

「かわらない。だいたいこれはお猿さんの仕事でしょ、私はイカ助けにくる奴らの相手するのに呼んだんでしょうが」


悟空と朔弥が拘束される人物をイカと言ったことに怒ったのか、ぎゃんぎゃん吠えている。
それにしても煩い。
イカが騒いでいると、救出に来たであろう軍が見えてきた。


「ほら、お猿さん行った行った。私はアイツ等の足止めに行くから」

「猿言うな!!…気を付けろよ、朔弥」

「…朔弥、だと?」


またか。朔弥は思いながら振り向こうとはせず、迫る軍に向かった。





「兼続殿ー!!」

「あー、ウルサいなぁ。アンタもイカ並みに騒ぐわけ?」


燃えるような赤の鎧の青年が軍を率いて道を進んでいる。
そこに突如現れた狐を模した面を付ける女。
青年は以前軍師に聞いた女だと感じとった。


「悪いけど、追わせないよ。これも仕事なんでね」

「ならば押し通るまで、覚悟!!真田幸村、いざ参る」

「お、力押し?いいね、嫌いじゃないよ、そういうの」


幸村の槍が朔弥を貫く勢いで迫るが、朔弥が纏う羽衣により阻止された。
まるで羽衣は意志があり、息をしているかのようにしなやかに動く。
ある時は鋼の様に持ち主を守り、ある時は剣の様に敵を貫く。


「結構粘るね、青年」

「そこを退いては貰えぬか、朔弥殿」

「あら、私ったら有名人?」

「やはり…左近殿に聞いた通りか…。よりにもよって朔弥殿と同じく名前…」

「何一人言言ってんのー?まあ、私はアンタ等足止め出来ればそれでいいんだけどさ」

「さーて、それはどうですかね」


いつか聞いた男の声だ。
気付けば周りを囲まれている。
これはマズい。朔弥は唇を噛み、逃げる算段を巡らす。
ここで逆に捕まり、人質になっては笑えない。


「お嬢さんには聞きたい事があるんで大人しく捕まってもらえませんかねぇ」

「やぁよ、オジサン。私人質取りに来て逆に人質にされたんじゃ笑えないじゃない」


そうですか。と左近が言うや否や、幸村と左近は一緒に朔弥の攻めに回った。
どちらもリーチの長い武器。
二人一緒にこられたのでは分が悪い。
しかも二人は兵を連れている。
武将が一人ならば苦ではないが二人となるとキツい。


「もらった!!」

「ぅがあっ?!!」


幸村の槍が朔弥の面に当たり、キィンと音を立てて面が割れ落ちた。
よろめく朔弥、顔を抑え、その素顔を覗き見ることは出来ない。
その様子に警戒し、近付かない二人。
すると朔弥は瞬時に移動した。
それはすぐ側の大きな岩の上。
そこには面を割られ、不快感を露わにする女の素顔。


「今回は分が悪いから退かせてもらう…おい、お前。次会ったらただですむと思うなよ」


一言のこして風に消えた朔弥。

しかし二人に朔弥の捨て台詞よりも女の顔に驚いていた。
あまりに雑賀の朔弥に似ていたではないか。

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