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「時間まで朔弥は少し休みなさい、それかこの辺りを歩いて兵達と話すといいよ」

「俺は細かい打ち合わせに行くから、お前はねねの言うとおりにしてろ。遠く行くなよ」

「わかった」


そう言うと孫市とねねは朔弥を残して行ってしまった。
成り行きと言っては言葉が悪いが、そうなってしまった。
これはタイムトリップと言うヤツだと思ったのは孫市と出会って少し。
男の格好、喋り、手に持つ武器。
舗装されてない道に明かりは電気でない。
電柱も電線もない空。
あの男も物好きだと、助けて貰いながらも呆れた。
こんな身元不明の赤の他人を助け、着物を渡し、武器の扱いを教え、世話をしている。
もしかしたらこの時代だからできるのだろうか、戦とやらで身寄りのない人間は掃いて捨てるほどいたんだろう。
昔授業でやった記憶がある。
雑賀孫市の名前に覚えはなかったが、流石に羽柴秀吉、後の豊臣秀吉はわかる。
そこで私は自分の状況を理解した。
いや、理解したんだと言い聞かせた。


「話すったって、知り合いいないし」


すぐそばにあった切り株に銃を抱える様に腰を下ろした。
周りは下級兵だろうか、慌ただしく走っている。
皆腰に刀をぶら下げている。
これから白昼堂々と人殺し大会が行われるのだから笑ってしまう。
それに自分も加わるのだ。
実感が湧かないというよりもゲームに近い感覚なのだ、まだ。
頭では理解しているのに、心が認めていない。そんな感じに。


「貴方も参加されるのですか?」

「え、…ああ、はい」


隣を失礼してもよろしいですか?と声を掛けてきた男を見ると真紅の鎧に槍を持った大柄の青年だった。
朔弥が腰をずらすと青年は失礼と腰を下ろした。


「今回が初陣ですか?」

「…はい、そんな、ところでしょうか」

「見たところ狙撃手のようですが、雑賀の方で?」

「はい、雑賀です」

「初陣では緊張されるのもわかります、私もそうでしたから」

「…はい」

「もしや精神統一のお邪魔でしたでしょうか?」

「いいえ、そのような事はありません。すみません、人と話すのが苦手なもので」


会話が下手なのです。朔弥が自分の足元を見ながら答えると青年が困ったように笑う気配を感じた。


「こちらこそ申し訳ない。ご迷惑でしたか?」

「いいえ、知り合いが居なくて少し心細かったので」

「そうですか、それはお力になれたようで何より。私真田幸村と申します、貴方は?」

「…朔弥、です」

「雑賀の朔弥殿ですね」

「はい、真田様」

「私に“様”は要りませんよ」

「それでは真田殿でしょうか。様と付けなければ殿だと教わりました」

「通常ならば名前に殿ですね、私の場合ならば幸村殿」


なんともおかしな男だ。
こんな話し相手には面白くもない私に見切りを付けずに話てくるとは。
朔弥は自分でもわかっているのた、自分は話でもって面白くないということに。
それからしばらく幸村と名乗った青年は談笑した後に「そろそろいかなければ」と立ち去った。


「おい、朔弥行くぞ」

「はい」

「なんだ、嬉しそうだな」

「…一方的にだけど約束したんだ、あちらから」

「約束?」

「討伐が終わったら一緒に祝杯を上げましょうだって」


朔弥が何とも嬉しいのと困ったのが入り混じる顔で言うものだから孫市は面食らってしまった。


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