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「清盛、ちょっといい?」


開け放された扉を朔弥はコンコンと叩き、己が来たことを部屋の主に伝えた。
部屋に入らずとも主の姿は見える。
主はこちらに背を向けて座り、その巨大な身体を揺らした。


「何用だ」

「妲己が卑弥呼を連れて来る手筈がよろしくなくてさ。そちらさんのお猿さん貸して貰いたいんだけど」

「お前一人で行けばよかろうに」

「援軍は多いに越したことあるまい?」


巨大を揺らす男は到底元同じ人間だと思えない。
それが老人なのだから余計だ。
朔弥を一瞥すると鼻で笑った。


「断る。と言いたいところだがお前達と儂等の目的の辿り着くところは同じ。よかろう、悟空を貸そう」

「話の分かる人で良かった。じゃ、お猿さんは借りるから」

「その代わり、卑弥呼は必ず連れてこい」

「当たり前じゃない。そのためにお猿さんまで借りるんだから」


なんとも面倒くさそうに溜め息をつきながら朔弥は清盛の部屋から姿を消した。




「おっ猿さーん、お仕事だよ」

「誰 が 猿 だ 。 誰 が」

「あんた」


悟空がいるであろう所で猿と連呼すれば直ぐに姿を現す孫悟空。
朔弥に鼻をツンと指でつつかれ、頬がピクピクと震えた。


「ほら、出撃するよ」

「あ?なんでお前の言うこと聞かなきゃなんだよ」

「清盛から許可も貰ってんの、あんたを借りるってね」


悟空の反論許さずに朔弥は続ける。


「卑弥呼を連れた妲己が襲われてる。その援軍に行く」

「お前一人で行けよ」

「私だけじゃ確実に助けられないからあんたに一緒に来てもらうんでしょ」


あんたバカ?と言いたげな朔弥の態度に悟空は握り拳を握ったが、一応朔弥は女だ。
女に手を上げると後々怖い事を知っている悟空は抑えた。


「清盛も私等も目的は一緒。協力しなきゃ」

「おっさん連れてけよ」

「援軍にそんな重鎮使ってどうすんの。身軽に動けるあんたが適任でしょうが」


朔弥の態度は悟空にとって不快だが、朔弥が自分の事を高く評価していることも知っている。
複雑で素直に朔弥に従いたくはないが、従うしかないのだ。
朔弥や妲己には恩はない。
あるのは清盛。
清盛と目的を同じ朔弥達に協力する事は清盛に恩を返す事に繋がるのだ。


「今から行って間に合うのかよ」

「やーね、だから私も行くんでしょ」


強気に朔弥は笑って見せた。


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