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珍しく孫市が顔を出したと思ったら、これまた珍しく人を連れてきた。
名前は朔弥で、なんとも可愛い顔をしている。
子供の愛らしい顔というものではなくて、見方によっては女にも男にも見て取れる。
少し抜けた様にぼんやりしているから、そこも可愛らしさに拍車をかけた。


「で、孫。お前次の戦…いや、討伐に手を貸してくれんのか?」

「あー…ああ。その事なんだか…なあ、秀吉…ねね」

「なんだい改まって、孫市らしくないねぇ」

「あいつ…朔弥の事なんだが…」

「お前が連れてきた、あいつか?」

「あの、可愛い子だね」


はっきりしない孫市に秀吉とねねは顔を見合わせる。
孫市という男はそこまでハッキリしない男ではない事を二人は知っているからだ。
ならば朔弥がどうしたのだ。


「あいつも参加させてみたいんだか…いいか?」

「いいもなにも、そのつもりで連れて来たんじゃろ」

「私もてっきりそのつもりだったよ」

「あいつの腕は確かにいいんだ、俺が保証する。ただ実践がないんだ。それに体力ないし、何より命をとるのが怖いらしいんだよ」


一番焦ったのはねねだ。
なんだいそれ。あの子、雑賀の子じゃないのかい。それに命とるのが怖いって…。
狼狽えるねねに秀吉も動揺を隠せない。


「なんだ…その、朔弥…は参加するつもりなのか?」

「俺が行けと言えば行くとさ」

「なぁ…っ、なんだいそれっ」

「あいつはそういう奴みたいなんだよ、自分がないんだ」

「…その癖命をとるのが怖いきとるのか。無駄死にが関の山じゃ」

「秀吉も、そう思うか?」

「わ、私はそんな子を戦いに出すなんて反対だよ!」


可哀想じゃないか…っ。
ねねが顔を伏せた。
秀吉も孫市の顔を見れずに目が泳いでいる。


「孫市、あんたはあの子をどうしたいんだい?」

「ねね…」

「俺…は、どうしたんだろうな、本当」

「孫市…」

「あいつは腕は確かにいいんだ、少し厳しくしてやらぁ俺に並ぶ。下手したら俺以上だ。でもあいつは人間関係がヘタクソだし、生きるのに無頓着な女なんだよ」

「…は?」

「あ?なんだ、どうした」

「今…」

「女って、言ったのかい?」

「ああ、朔弥は女だが…どうかしたか?」


その時二人は驚きの悲鳴を上げた。

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