「ほー、洒落っ気のない娘じゃな。まあ媚びてくる娘どもよりは百倍はマシよ」
「………」
鼻で笑うように言い放った一言に朔弥はどうしようかと固まった。
年の頃は同じくらいだろうか。
その青年は片目を隠し、態度がデカい。
そうだ、新しい雇い主の独眼竜だ。
朔弥はただ黙って頭を下げた。
「ほら、朔弥がビビった」
「このくらいでビビるようであれば、まだまだじゃな。ここではやって行けん」
「んなこと言うなよ、朔弥はこれでも腕がいいんだ。拗ねるとどっか違う軍に行くかも知んねえぞ。上杉とか」
頭の上の方でニヤリと孫市の笑う気配がしたかと思うと、今まで余裕だった伊達政宗の言葉に緊張が走った。
どうやら彼は上杉が嫌いらしい。
これは付き合う上でありがたい情報だ。
「コイツ、上杉の兼続と知り合いでよ」
「兼続…?さっさとアヤツと縁を切れ朔弥」
「…へ?」
「あのような堅物と縁があってはお前の運の尽きと言うものだ。知り合いというのも辞めてやれ」
小言も小言。
うっかり頭を上げた朔弥に説教の様に説き伏せる。
どうにも直江兼続が嫌いらしく、ポカンとする朔弥にどういう人間かと延々と説いている。
「おい、政宗。朔弥がポカンとしてっぞ」
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