どうしよう
そして
嘘
それが朔弥の頭を駆け巡った。
本陣に帰還する目前で知らされた。
「雑賀孫市重傷、意識がなく危険な状態」
それを聞いた瞬間朔弥の頭は真っ白になった。
考えるより先に足が動いて、一緒にいた幸村を残して走り出した。
「朔弥!こっちだよ」
「…っおねね様、孫市、孫市が」
「落ち着きなさい、朔弥。今孫市は手当てを受けてるよ」
「死なない?孫市、死なない?」
「大丈夫だよ、落ち着きなさい。幸村ー、朔弥をちょっとお願いね。混乱してるみたいだから気をつけてあげて」
少し遅れて本陣に帰還した幸村。
あたりを見回しながらやってきた幸村に声をかけたねね。
ちょうど幸村も朔弥を探していた様で、「はい」と答えると朔弥をそこから引き離した。
「孫市、死なないよ、ね」
「大丈夫ですよ、孫市殿は」
「大丈夫、大丈夫、なんだよ、ね」
大丈夫ですよ、朔弥殿。
そう言い聞かせる幸村。
正直朔弥のこのような姿を見て困惑している。
何故ならいつも落ち着き、敬語を忘れない朔弥だ。
それが今、師のような存在である孫市の重傷に心を乱している。
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