「孫市、あの子何者」
戦がなんとか一段落つき、朔弥が孫市の姿を見るなり孫市に詰め寄った。
どうも興奮している様子の朔弥。
戦の後は誰しも興奮する。
朔弥も例外ではないが、ここまで顕著にでる事はない。
「何者って…なんだ?」
「とぼけないで、あの子…ガラシャ武器もなしで敵に突っ込んだと思ったら」
「おお、孫!!無事じゃったかー?」
息巻く朔弥をよそにガラシャは孫市を見て嬉しそうに駆け寄ってきた。
そして勢いあまって孫市の胸倉を掴む朔弥を見て「喧嘩は駄目なのじゃ」と言う始末。
朔弥が「喧嘩じゃない」と言うと、どこをどう納得したのか分からないが頷いた。
「のう孫、朔弥は凄いのじゃ!こう、敵を狙ってな。こう、パンと撃つのじゃ。しかも百発百中なのじゃ」
「あ、ああ。」
「わらわも朔弥に負けない様に頑張ったのじゃ!こう、ていっていっとな」
構えて得意そうに正拳突きをするガラシャ。
朔弥がそこの岩に向かってやって孫市に見せるといいと言うと、ガラシャは「それは名案じゃ!」と近くの岩に近づき、孫市に見ていろと手を振った。
「ちゃんと見ててよ、孫市」
「ああ、ったく…」
「孫、いくのじゃー」
とう!可愛らしい掛け声とは裏腹にガラシャの目の前にあった岩はその巨体を崩した。
顎が外れんばかりに口をあんぐり開ける孫市。
嬉しそうに胸をはり、「どうじゃ、孫」と威張るガラシャ。
朔弥は「ガラシャすごーい」と棒読みだ。
これで孫市は理解した。
あの朔弥の興奮の理由だ。
ならばあの自分のみた、か弱い少女の姿は偽りがと疑いたくなる。
朔弥もそれと同じ意見なのだろう。
「どれだけ私が驚いたかわかった?あれを戦場でいきなり見せられたんだけど」
「ああ、そら…驚くわな…」
「まあ、おかげでこっちは後方支援に専念できたんだけど」
恐らく、前衛で突っ込むガラシャを後方で朔弥は支援したのだ。
相性がいいといえば良いのだが、このギャップは大きすぎる。
駆け寄って孫市に「どうじゃ孫。わらわもやるであろ?」と笑うガラシャに孫市はただ笑うしかなかった。
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