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朔弥の負傷が酷い。
そう聞いたのは雑賀が奇襲にあい、その戦自体が終息に向かった時。
聞いた所によれば、雑賀は分断され、徹底的に叩かれたらしい。
雑賀孫市の率いる主力と、その援護の部隊を分けたのだ。
援護にいた朔弥はその場の少ない生き残り。
頭である孫市の部隊も大きな打撃を受けたのは容易に想像できる。

それを助けたのが幸村の配下のくのいち。
救援に向かったのが秀吉の子飼いの一人、加藤清正だった。

孫市はまだやれると戦場に残り、朔弥を見た孫市は清正に朔弥を頼むと一言。
傷だらけの上に出血が酷く、息が浅いのだ。
意識も良くて朦朧、悪くて無い。


「おい、ねね」

「孫市、なんだいまだ手当て受けてないのかい?まったく、仕方ないねぇ」

「朔弥の様子どうだ?目、覚めたか?」

「あの怪我だし…当分起きないかもねえ。傷負けを起こさなきゃいいんだけど」

「…そんなに悪いのか?」

「見ただろう?切り傷だけじゃない、火傷も酷くて…可哀想だよ。意識が無いから余計ね」


二人が話していると幸村もそこに加わった。
そして、朔弥の様態も。


「幸村、助かったぜ礼を言う。お前が部下を寄越してくれなかったら朔弥は死んでたからな」

「そんな…もっと、もっと私が早くくのいちをそちらへと向けていればもっと被害は少なかったでしょう…申し訳ありません」

「過ぎた事を悔いても仕方ないよ、ほら」


この戦だけではないが、戦で失うものは多い。
幸村の軍も、ねねの軍も、他の軍も。
誰かが死んで、生き残っている。
それに対して負い目を感じる事は無いのだ。
それが、知り合いだったとしても。
命が残っただけ儲けたものだ。


「あの、おねね様、朔弥殿の見舞いはできますか?」

「意識ないけど…いいかい?」

「はい、ただ私がお会いしたいだけなので」

「…おい、幸村。お前もしかして朔弥事好きなのか?」

「え?そうなのかい?」


興味津々のねねに複雑そうな孫市。
幸村はとっさに否定した。
朔弥とは馬の約束をしていたのと、友人だから。心配なので会いたいだけだと。


「そうだ、ねね。清正はどこだ?朔弥の礼をしないとな」

「朔弥も清正も一緒だよ、あの救護の所にいるよ」

「…なんでまた一緒に」

「清正は今回前線じゃなくてね。私の援護にきてもらってたんだよ。それで朔弥を頼んだのさ」

「そ、それは危険では…?」


何を言うんだい幸村。と笑うねね。
あの子は朔弥に手を出す子じゃないよ、なにより怪我人なんだからね、朔弥は。と根拠のない自信で幸村を諭した。


「なあ、幸村」

「はい、なんでしょう」

「朔弥の、見舞い、俺も行くぜ」

「私もそうお誘いしようと思ったばかりです」


ねねが騒いじゃ駄目だからね。と言ったのが二人に届いたかはわからない。

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